ごはんエッセイ 「箸の置き場所」

お く い (o ku i)

ごはんエッセイ 食べ方と躾

「左手は!」


「汁物は箸を置いて!」


「切先三寸で箸、使うんだよ!」


食事の食べ方の辞書は、祖母の頭の中にかなり強くあり、ページ数も相当なものだった。


大枠から細かいところまで、そういう直線的な教えは祖母から。


もう一つ、重要なのが


「どう見せるか?」


ここに全集中と力点を置いた母親の指導。


これは痛みが伴うから、必然的に許されない注意が必須である。


無邪気にご飯を食べる、などということは有り得ない。とにかく圧が強いのだ。


僕の場合、実は左手の方がお箸などは持ちやすい。書くのは右の方が楽だけど。


「あんたな、何してんのん?」警告が一つ発せられた。


「---いや、何でもない」即右手に持ち替える。


「パチーーーーン!!!!!」


来た。左肘に凄いのが。


箸の本気がロックンロールしている。


秒速で、お箸が鞭になった。しまった。左肘を食卓に乗せたままにしてしまった。


「あんた、偉なったな。いつから一丁前やのん?」


やらかした。左肘にお箸二本の本気が余韻を残している。


「食べるの、止めえな」


フォローに感謝した。


「あんた、そこまでやらなくて良いんだよ」祖母の声で鎮まった。


夜の為の躾が広げられる食卓。


おかげさまで、和食の食べ方は大人がドン引きする程に綺麗になった。食べる順からお椀の扱い方まで。


「もの凄く食べ方綺麗やね」と、数回言われた事がある。


得た魚は、大きいね。


痛み以上の漁獲量だ。



*小説を紡いでいます。

https://kakuyomu.jp/works/822139842391905206

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