第8話
佐藤太郎は、ベッドに座ったままスマホを握りしめていた。
昨日の配信切り忘れ事件から一夜明け、チャンネルは爆発的な勢いで成長していた。
登録者数:32000人
ボス戦+神託動画:150万再生突破
SNSトレンド:上位常連
投げ銭収益だけで十万円を超え、企業スポンサーの正式オファーが三件届いている。社畜時代の月給を軽く上回る額だ。
しかし、太郎の心は喜びだけではなかった。
神託アプリを起動する。
ステータス画面は変わらず強大だが、新たなメニューが開放されていた。「神託ログ」。
そこに、昨日の声が文字として記録されている。
『転生者よ、よくぞここまで成長した。だが、世界の異変は加速している。ダンジョンの深部に潜む「崩壊の核」を破壊せよ。それが汝の試練だ』
『報酬は、汝の望むもの全て。だが、失敗すれば世界は滅びる』
さらに下に、追加のメッセージ。
『転生者の記憶を一部開放。汝の前世を思い出すがよい』
太郎は指を震わせながらタップした。
視界が一瞬暗転し、フラッシュバックが始まる。
――自分は、古代の戦士だった。
広大な戦場。空を覆う黒雲から、無数の魔物が降り注ぐ。仲間たちが次々と倒れていく中、自分は巨大な剣を手に最前線で戦っていた。
「神託の加護よ、我に力を!」
叫びと共に、金色の光が体を包む。だが、敵は強大すぎた。最後に見たのは、世界が崩壊していく光景。
記憶が途切れ、太郎は現実に引き戻された。
額に汗が浮かんでいる。
(俺……前世で世界を救おうとして、失敗したのか?)
アプリは転生者を複数選んでいる可能性が高い。そして、自分はその一人。
なぜ今、この時代に。
太郎は深呼吸をし、冷静になろうとした。
少なくとも、今の自分は強い。レベル85、スキルも充実している。
あかりに連絡しよう。
昨日交換した連絡先から、メッセージを送る。
『あかりさん、こんにちは。昨日はありがとう。ちょっと大事な話があって、今日会えませんか? ダンジョンじゃなくて、外で』
返信はすぐに来た。
『もちろん! 私もたらおさんの動画見てびっくりしてました。あの声、本物だったんですか?』
午後、カフェで落ち合うことにした。
待ち合わせ場所は、ダンジョン近くのファミレス。太郎は早めに着き、窓際の席で待つ。
あかりが現れた。普段着の彼女は、看護師らしい清潔感のある雰囲気だ。
「たらおさん、お久しびです」
席に着き、軽く挨拶を交わした後、太郎は切り出した。
「実は、あの神託の声……本物なんだ。アプリが俺に直接話しかけてきてる」
あかりの表情が真剣になる。
「世界が滅びるって……どういうことですか?」
太郎は記憶のフラッシュバックを説明した。前世の戦い、崩壊の核、そしてアプリが古代神の遺産である可能性。
あかりは黙って聞き、時折頷く。
「私も、最近ダンジョンで変な感じがしてたんです。モンスターが少し強くなってたり、異変魔石みたいなのが増えてたり」
二人は対策を話し合った。まずは情報を集めること。もっと強いダンジョンに挑戦し、崩壊の核を探すこと。
別れ際、あかりが言った。
「私も一緒に戦います。たらおさん一人じゃ危ないですよ」
太郎は感謝の言葉を返した。
帰宅後、チャンネルを確認。
ランキングで、初めて総合100位以内に入っていた。現代ファンタジー部門では上位30位。
コメントには心配の声も混じる。
『神託マジならヤバくね?』
『世界救ってくれよたらお』
『次回配信待ってる'
しかし、その中に一通のDMが届いていた。
送信者:ケン@迷惑系トップ配信者
内容:「おいチート野郎。神託とか嘘くせえよ。お前の動画、全部ヤラセだろ? 対決しろよ。俺のチャンネルで公開バトル。負けたら引退な」
ケンは登録者10万人超の有名配信者。煽り動画で人気を博す迷惑系だ。
太郎は画面を見つめ、静かに息を吐いた。
(来るなら来い。俺はもう、底辺じゃない)
アプリから小さな通知。
『ライバル出現。勝利でボーナススキルポイント+10』
警告の予兆を感じながら、太郎は対決を受諾する返信を打った。
公開対決の日取りは、三日後。
成り上がりの階段が、また一つ高くなった。
次の更新予定
底辺配信者の神託アプリ ~現代ダンジョンでチート転生し、無双配信で世界の頂点へ成り上がる~ kuni @trainweek005050
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