第6話 結末[汚れた女の末路]

 あの忌まわしい夜――俺が「死」に、そして再生したあの夜から三ヶ月が過ぎた。


 俺は刑務所の面会室のガラス越しに立っていた。

 目の前に座っている男が、かつての死神海斗だとは到底信じられなかった。

 整えられていた髪はストレスで抜け落ち、顔面は房内でのリンチによる痣だらけだった。


「佐藤……出してくれ……頼む……」声は枯れ、激しく震えていた。


 天海家は奴を徹底的に叩き潰した。

 俺が奴の個人口座へ誘導した横領と詐欺の罪により、十数年の懲役刑が下されたのだ。


「マネージャー、その服……案外似合っていますよ」俺は無感情に突き放した。

「何でもする! 金も……会社の機密も……何でもだ! 頼む、告訴を取り下げてくれ!」 俺はただ立ち上がった。

「あんたにはもう何も残っていないよ、海斗。自尊心さえ、囚人たちの手でズタズタにされたんだろう?」


 係官に強制的に引きずられていく奴の、狂ったような叫び声を背に俺は部屋を出た。


 ———~———


 その後、俺は新宿の歓楽街にある暗い路地を通りかかった。

 薄汚れた服を着た一人の女が、うらぶれたクラブの前で脂ぎった男に縋り付いているのが見えた。


 元恋人の、あかりだった。


 彼女は投獄こそされなかったが、それは死よりも過酷なものだった。ブラックリストへの掲載とスキャンダルの拡散により、雇ってくれる会社などどこにもなかった。

 両親からは縁を切られ、5000万円の借金が影のように彼女を追い詰め続けている。


 今や彼女は、その日食べるためだけに、最も底辺な場所で自分を切り売りしていた。

 かつて誇っていた美貌は色褪せ、目の下には深い隈が刻まれ、顔はひどくやつれ果てていた。


「お願い……もう少しだけ……」男がアスファルトに数枚の硬貨を投げ捨てると、彼女は啜り泣きながらそれを拾った。


 彼女の目の前に、磨き上げられた俺の靴が止まった。彼女が顔を上げる。

 俺と目が合った瞬間、彼女は激しく震え出した。

 恥辱にまみれたその顔を、必死に隠そうとしている。


「れ、蓮……? 蓮なの?」

「蓮? ねえ、蓮なんでしょう? 答えてよ……」


 俺は答えない。足を止めることさえしなかった。

 ただ、誤って踏んでしまったゴミの山を通り過ぎるかのように、彼女の横を歩き去った。 あかりにとって、かつて自分を崇拝していた男に無視されることは、どんな罵詈雑言よりも残酷な拷問だった。


 俺の復讐は終わった。奴らは死んではいない。ただ、人生と呼ぶに値しない泥沼の中で腐っていく。

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