第4話 結末[水樹の視点]

 私は警察署の冷たい留置所の隅に座り込んでいた。

 海斗さんからのお小遣いで買った高級なドレスは、今や破れ、汚れきっている。

 けれど、そんなことは一番の痛みじゃなかった。


 警察に没収される前に中身を見てしまった私のスマホが、署員のデスクの上で震え続けている。

 誰からの連絡かは分かっている。お母さん。お父さん。それに友達。


 蓮……私が見くびっていたあの馬鹿な男は、本当にやり遂げたんだ。

 彼は私の動画や写真を、親族のグループチャットに送りつけた。

 私のスマホに入っているすべての連絡先に、それをぶちまけたんだ。


「売女」

「家族の恥さらしだ!」

「二度とこの家の敷居を跨ぐな!」


 それが、お父さんからの最後のメッセージだった。

 私は叫び、自分の髪をかきむしった。


「なんで!? なんで蓮が、あんなモンスターに変わっちゃったのよ!?」


 昔なら、私が作り笑いを見せるだけで、彼は何でも差し出してくれた。

 昔なら、彼は私の足元で這いつくばる忠実な犬に過ぎなかった。

 どうして彼は、他の男たちのことを知っていたの? どうして私に、あんな酷いことができたの?


「水樹あかり、弁護士が面会に来たぞ」警察官が、蔑むような声で言った。


 私は希望を持って顔を上げた。

 海斗さん? 彼が私を助けてくれるの?


 しかし、現れたのは山のような書類を抱えた冷徹な顔の弁護士だった。「私は債権者の代理人です。海斗マネージャーが破産を宣告し、あなた名義の保証人書類が法的に有効であると認められたため……あなたには現在、5000万円の個人負債があります」


「はぁ!?」


 心臓が止まるかと思った。

 5000万円? 今の私の財布には、5万円だって入っていないのに。


「支払いができない場合はすべての資産が差し押さえられ、あなたは一生、ブラックリストに載ることになります」


 私は冷たい床に座り込んだ。

 さっきのホールでの、蓮のあの目を思い出した。

 彼の瞳にはもう愛情なんて欠片もなくて、ただ道端のゴミを見つめるような目だった。


 やっと気づいた。蓮は、ただ私と別れたかっただけじゃない。

 私を生かしたまま、貧困のどん底という地獄で腐らせたかったんだ。


「蓮……助けて……ごめんなさい……蓮!」


 私は鉄格子の向こうでヒステリックに叫んだが、私の声は静かなコンクリートの壁に跳ね返るだけだった。

 かつて私が捨てた、あんなに私を愛していた男が、今は容赦なく私の人生を粉々に壊している。

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