9 幼馴染(終)
夜
可憐は自分の部屋で、布団に仰向けになっていた
(……なにやってんだ、俺)
昼間の自分を思い出して、顔を覆う
スカート
作った声
無理に笑った表情
「……恥ずかしすぎる……」
布団に顔を埋める
しょうの前で、あんなことをしてしまった自分が情けなくて
同時に――ちゃんと見抜かれたことが、少しだけ嬉しかった
(やっぱり……)
胸の奥が、きゅっと締まる。
(……明日、どんな顔で会えばいいんだよ)
そう思いながらも、
どこかで期待してしまっている自分がいた。
―――――
翌日。
昼休みが終わりかけた頃、
しょうが可憐のところへ来た。
「なあ、可憐」
「ん?」
「今日、放課後。屋上に来てほしい」
一瞬、時間が止まった気がした。
「……なんで?」
「ちゃんと、話したいことがある」
それだけ言って、しょうは去っていった。
可憐は、その背中を見つめながら、
心臓の音がうるさくなるのを感じていた。
―――――
放課後の屋上。
夕方の風が、フェンスを揺らしている。
少しだけ冷たくて、現実感があった。
先に来ていたしょうが、振り返った。
「来てくれてありがとう」
可憐は、軽く頷く
「……それで?」
しょうは、しばらく黙っていた
深呼吸をひとつしてから、口を開く
「ちゃんと、言葉にしようと思ってさ」
視線が合う
逃げ場はない
でも、不思議と怖くなかった
「好きだ」
その一言が、まっすぐ落ちてくる
「友達としてじゃなくて、恋人として――
お前のそばに居させてくれ」
可憐は、一瞬、息を忘れた
胸の奥に溜まっていた感情が
一気に溢れそうになる
「……俺さ」
可憐は、ゆっくりと言葉を選ぶ
「ずっと考えてたんだ。
女だからとか、男だからとか」
風が吹いて、前髪が揺れる
「……でも」
顔を上げて、しょうを見る
「そんな事、どうでもいいくらいに
お前のこと、好きだって気づいた」
しょうが、息を飲むのが分かった
「俺は、俺のままだ」
逃げも、誤魔化しもしない
「それでもいいなら……」
一拍置いて、少しだけ照れたように付け加える
「俺、少し重いかもだぞ?」
沈黙
それから、しょうは――笑った
「……知ってる」
そう言って、一歩近づく
「でもさ」
可憐の手に、そっと触れる
「それ込みで、好きになったんだ」
指先が、絡まる
逃げない
離れない
夕焼けの屋上で、二人はただ立っていた
言葉はもう、いらなかった
遠回りばかりしてきた幼馴染は
ようやく同じ場所で、同じ気持ちを見つけた
妄想ぶちこみ箱 ネム @1wa1ta7
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。妄想ぶちこみ箱の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます