第6話 人間は、神になりたがる
地下深く。
光の届かない円形の部屋に、五つの影が集っていた。
中央には、黒い石の円卓。
その上で、水晶が淡く光っている。
「……出てる」
そう呟いたのは、スズメだった。
華奢な体。
年齢不詳の声。
指先で水晶に触れながら、淡々と映像を覗き込んでいる。
水晶の中に映るのは――
森でテンシを撃ち抜く少年の姿。
「また、殺した」
銃声。
光と闇。
消えるテンシ。
その瞬間。
「――っは」
低く、獣のような息が漏れた。
クグツだ。
筋張った体。
人間にしては、あまりにも動きが研ぎ澄まされている。
「いい……」
唇が歪む。
「最高だろ、これ」
円卓の反対側で、男が不快そうに眉をひそめる。
「やめろ、クグツ
会議中だ」
「会議?」
クグツは笑った。
「まだそんなこと言ってんのか、オボロ」
水晶の中で、
メグルが銃を下ろす。
クグツの瞳が、完全に狩る側の色になる。
「なあ……あいつ」
「神を殺してる」
スズメが、事実だけを言う。
「人間の姿で
テンシを、躊躇なく」
沈黙。
最後に口を開いたのは、
円卓の奥に座る女――アヤメだった。
「……美しいわね」
「だろ?」
クグツは即座に食いつく。
「ダテン様が言ってた通りだ」
「“神を理解した人間は、神を否定できる”」
アヤメの声は、祈りに近い。
「彼は、選ばれた存在よ」
オボロが、低く唸る。
「待て
あれはグロウスとも接触している」
「だから何?」
クグツは椅子から立ち上がった。
「正義ごっこしてる連中だろ
神を管理するつもりで、神を真似てるだけの」
彼は、もう水晶を見ていない。
視線は、もっと先――
メグル本人を見ているかのようだった。
「俺、行くわ」
「クグツ」
スズメが呼び止める。
「勝手に動くと、ダテン様に――」
「怒られる?」
クグツは振り返った。
その笑顔は、どこか壊れている。
「違う」
「きっと、喜ぶ」
アヤメが、静かに頷いた。
「彼は試練よ」
「ダテン様の思想が
“正しいかどうか”を測るための」
クグツは、楽しそうに肩を回す。
「なあ、スズメ」
「……何」
「次、あいつが殺すテンシ」
クグツは言った。
「俺にさせろ」
スズメは、水晶を見る。
そこに映るメグルの背中は、
まだ何も知らない。
「……映像、途切れるわ」
「上等」
クグツは、闇の通路へ歩き出す。
「人間が
どこまで神に近づけるか」
「俺が、確かめてやる」
足音が消える。
残された四人。
オボロが、ぽつりと言った。
「……あれは、信仰じゃない」
アヤメは微笑む。
「いいえ」
「信仰の完成形よ」
水晶の中で、
少年はまだ歩いている。
自分が――
神と人間の両方に、狙われ始めていることを知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます