第二話:接触

 『まあ、夜の森の中に全身が発光する幼女とか見たら、立場が逆なら俺もビビるな。妖怪変化の類とか思われているのかも』

彼女は夜の森を踏破するため、《持続する灯りの魔法》で自身の体を発光させていた。

蛍光灯ほどの明るさで周囲を煌々と照らしている。

不自然なことこの上なかった。


 彼女と対峙する男たちはおびえているようにも見えたが、彼女も内心は怖かった。

男たちの方が人数も多い。

それだけではない。

彼女は自分が幼女になっていると結論付けたが、男たちと身長を比べると改めてそれを確信する。

幼女の身長から見上げる成人男性たちは誰もかれも巨漢に見えるのである。

威圧感がすごい。

『ここで俺がおしっこちびっても、俺を笑う資格のあるやつはたぶんいないぞ』


 だが彼女には神秘の力、魔法がある。

最後の手段として彼女の身に着けている光と闇に関する7種の魔法の内で最も高度な魔法、《透明にする魔法》がある。

一時的に自分の身を透明にできる。

『どうにもならなくなったらこれを使って逃げればいい』

彼女はそう思い恐れを抑え込んだ。


 相手の言葉がわからないが、これも打つ手はある。

彼女は他者との情報伝達に関する魔法を5つ習得している。

その内の《相手の思考を読む魔法》と《相手に思考を伝える魔法》を用いることにより意思の疎通は可能である。

もっともこの魔法は両方とも1分ほどしか持たない。

維持して長持ちさせることは可能だが、高い知力を持ち、高い魔法の技能を持つ彼女でも体力を消耗する。

しかも魔法というものは複数を維持するとさらに負担がかかるのだ。

いままで森を歩いてそこそこ疲れている彼女ではギリギリまで体力を消耗しても3・4分維持できるかどうかであり、ギリギリまで体力を使うと今度はいざというときのために《透明にする魔法》に使う分の体力がなくなるだろう。

それにこの魔法はどちらも一度に一人にしかかけられないときている。

魔法は万能ではなくただの技術なのだ。


 『彼らのリーダーは誰?』

様子を観察して、リーダーらしい一人に目を付ける。

そして彼女は《相手の思考を読む魔法》と《相手に思考を伝える魔法》を発動させた。

低い技能で魔法を習得するとはっきりした発声や動作が必要だったりするのだが彼女の技能は高い。

動作も発声も不要であり魔法をかけるのに必要な準備時間は通常の4分の1である。


 『こんばんは、私は貴方の心に直接話しかけています。わたしが伝えたことをそのまま言葉にしてお仲間にお伝えください』

『わたしにも自衛のための力はありますがあなた達の敵ではありません』

『あなた方の言葉は知らないものでして』

『これは単なる技術である《魔法》によるものですので驚くことはありません』

『この魔法は続く時間が数分しかなく、切れたら次に使えるまで20分ほど私は休息しなければなりません』

『そちらからご質問がおありでしたら手短にどうぞ』

『その際にはお仲間にも質問がわかるように心で思うだけではなく声にも出してください』

彼女は必要と思われることをできるだけ手短に伝えた。

彼女が彼に言葉を声に出すことを要請したのは単に仲間に伝えてもらうためだけではない。

少しでも彼らの言葉を覚えるためだ。

今の彼女の、おそらくは増大している知力があれば可能だろう。

いつまでも会話のために、このように消耗する魔法など使ってはいられないのである。


 『ああ、こうしている間にも魔法の持続時間が……』

彼女は焦りもあるが、素直に彼が彼女の言葉を仲間に伝え、こちらに質問してくることを待つ。


 そして彼が声に出しながら心にも質問を思い浮かべた。

『おまえは何者だ? 魔法を使えるということは聖職者か? それとも話に聞く天使か?』

『私はとても遠いところから来ました』

『貴方達に害をなす気はありません』

『それどころか私に協力していただければ利益をもたらして見せましょう』

『私には魔法とそれ以外の不思議な力がありますから』

『奇跡までつかえるのか! 何ができる?』

『いくつかありますが奇跡で攻撃ができます』

彼女は彼らが万が一にも自分に襲い掛かる気にならないよう、身を守る力があることを見せる必要があると考えていた。

『見てください』

彼女は攻撃のための(彼らが言うところの)奇跡、《Laser Cosmicus Magia》を木に数発撃ち込んで倒して見せた。

『なかなかお前は強いのだな』


 彼女の見たところ、彼らの様子はそれなりに驚いているといったところである。

恐るべき力を目の当たりにし畏怖しているようには見えない。


『後はちょっとした傷や病気を治したりする癒しの奇跡が使えます』

『おお、それは!』

喰いついた。

『あと、食べる物の手本をもらえれば食べ物が作れます』

実は彼女は金銀プラチナといった貴金属を作れる可能性もあるのだがこれは隠す。

下手に欲を出されたらどうなるかわからないという判断である。

『それは凄いな!』

また喰いついた。

彼女はどうやら自分に協力すれば得だということを伝えることができた、と判断し、いったん魔法での会話を打ち切ることにした。

そろそろ最悪の時に《透明にする魔法》を使うために必要な体力までなくなる。

『そろそろ魔法が切れます。次に使えるようになるまで20分休ませてください。その間に私に協力するか、お仲間とお決めになってください』

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異世界転移したTS幼女が化石燃料に頼らず持続可能で快適な世を構築しようとする実験小説 うどん魔人 @Spirits90ABV

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