中二病スキルで、今日も定時退社
塩塚 和人
第1話 「定時後、ダンジョンへ」
竹本ゆうじは、今日も定時で会社を出た。
それは珍しいことではない。彼は残業をしないと決めている。
「お先に失礼します」
軽く頭を下げ、ビルを出る。
夕暮れの空はオレンジ色で、遠くにダンジョンの入口が見えた。
五年前、突然現れたそれは、今では街の風景の一部だ。
立入禁止の柵も、警備員も、もう誰も気にしない。
ゆうじはネクタイを外し、鞄を持ち替えた。
中には作業着と、少し古い短剣。
今日は探索者ギルドに登録する日だった。
ギルド東湾支部は、思っていたより静かだった。
木目調のカウンターに、優しそうな受付員がいる。
「初登録ですね?」
「はい。無理しない範囲で、やろうと思ってます」
そう言うと、少し笑われた。
測定を終え、スキル欄に表示された文字を見て、ゆうじは首をかしげた。
《中二病》
「……なんですか、これ」
「正式名称です」
正式なのか、と心の中で突っ込みつつ、登録は完了した。
その足で、ランクFダンジョンに向かう。
入口をくぐると、ひんやりとした空気。
一層目。
スライムが一体。
「ええと……スキル」
発動した瞬間、文字が浮かぶ。
《ウィンドカッター》
風の刃が飛び、スライムは消えた。
「……派手だな」
必要以上に派手だが、悪くはない。
ゆうじは深追いせず、三層で引き返した。
ドロップしたのは、少し丈夫な手袋。
防御力が上がるらしい。
帰り道、コンビニで弁当を買う。
今日はハンバーグだ。
「これでいい」
強さを求めなくても、生活は少しずつ良くなる。
ダンジョン帰りの夜風は、思ったより心地よかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます