第3話 不思議な初夢(その3)

孝至さんから沙名さんにかかった電話は切れて夢サービスが出した孝至さんの画像も消えました。

寝室の沙名さんを見ると沙名さんは寝室の左端に行ってピンクのニットセーターを脱いで若草色のニットセーターに着替えて旦那の側に戻って来ました。表情も何だか穏やかになっていました。

あたしはこの先を3人に任せて夢の世界から出ることもできましたが、孝至さんが沙名さんのお家に来てからの事も見届けた方が良いと思うようになって、もうちょっとこの不思議な夢に付き合うことにしました。そして、何もせずに待っている代わりに沙名さんにお声をかけることにしました。

「沙名さん、若草色のニットセーターは綺麗ですね。お似合いですよ」

あたしは沙名さんに言いました。すると沙名さんは、

「あたし、何だか急に気分が変わっちゃって、それで着替えしました。それにね、その時以前の記憶が飛んじゃったみたいで過去の事、覚えてないです。」と言いました。それであたしは、

「あのね沙名さん、あなたはあたしが 孝至さんに電話をかけさせる為に『あんたの氏名から他の個人情報をつかんで、あんたの関係者に良くない噂を流して表に出られなくするよ。』って言ったんですよ。それは名誉毀損罪や侮辱罪に相当する犯罪行為ですよ。」

と、言いました。すると沙名さんは、

「あたし、あなたにそんな酷いこと言っちゃってたんだ。ごめんなさい。」

と言いましたから、あたしは沙名さんに

「沙名さん、謝ってくれてありがとう。それからね。沙名さんは、旦那さんの病状が重いと思ってその事を息子さんの孝至さんに電話で伝えるのに、自分で孝至さんに電話すればすぐ済むのに、

あたしに代理で電話をかけさせようとしたんですよ。最近、悪い人達が自分の犯罪行為に利用する為に『お父さんが病気だ』とか、言われた人の気を動転させるメッセージを伝えるウソ電話をかけることがとっても流行っているんですよ。沙名さんの旦那さんはホントに病気だけれど、それをあたしに代理電話させると、かけたあたしは、犯罪まがいの不審電話のかけ子として警察に通報されるかもしれなかったんですよ。幸い孝至さんはあたしを通報しませんでしたから良かったけれどね。」

と言いました。すると沙名さんは、

「へえ。そんなことになるとは知りませんでした。ごめんなさい。」と言いました。沙名さんは、前と打って変わってしおらしくなっていました。あたしは、そんな沙名さんにアドバイスするように

「沙名さん、家族の病気や緊急事態は他人に知られたらまずい情報ですので、その取扱は慎重にすべきです。沙名さんは、旦那さんに旦那さんの情報を伝える了解を取っていませんでしたが、それは必ずしなければいけませんでした。そして了解を取った後でも他人に漏れないようにあなた自身で伝える人だけに確実に伝わる方法で連絡すべきでした。ですから、代理電話なんて頼んじゃいけないし、それは有り得ない連絡方法なんですよ。」

と言いました。すると沙名さんは、

「そう言う決まりごとがあるんですね。知りませんした。ごめんなさい。」

と言いました。あたしは、沙名さんに

「ですから沙名さん、あなたは夢内でも夢外でも他の世界に行っても、今後こんなことは絶対にしないでくださいね。」と言いました。すると沙名さんは、

「よくわかりました。以後気をつけます。申訳ありませんでした。」

と言いました。それであたしは沙名さんに

「それなら沙名さん、あなたを許してあげます。」

と言いました。沙名さんはホッとした様子でした。夜がとっくに明けて寝室の時計は午前7時半を指していました。あたしは、沙名さんに

「孝至さんが来るまで30分ありますが、どうしましょうか。」と言いました。すると沙名さんは、

「何かの縁で、幸加さんがここの夢を見なさったのですから、この町の名所と伝わる伝承についてお話させて頂きます。」

と言いました。あたしは沙名さんに

「どうぞお願いします。」

と言いました。沙名さんの横で快吉さんはぐっすり眠っていました。それから30分足らずの間、あたしは沙名さんのお話を聞きました。

沙名さんお話はとってもうまくてあたしはゆっくり楽しめました。





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幸加の不思議な初夢 立松希惟 @karaai2859

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