変わったのは君だった

朽ちた蝶

プロローグ

運命が実在していたら、どれほど救われただろう。

この虚無感も絶望感も、やるせなさも、

自ら暗闇に溺れていくこの性格も。

そういう運命なんだと誤魔化すことができたなら、どれほど楽だろうか。


「恒一? 今、何考えてるの?」


澪の声に意識が戻る。

夜風が肩をかすめ、刺さるような冷たさが皮膚の奥まで染みて、ようやく現実に引き戻された。


「…んー、なんだろう。」


俺は曖昧に笑って、言葉を探すふりをした。

結局、何も見つからなかった。

それでも彼女は、隣に座って俺と同じように夜空を眺める。


「今日も星、綺麗だねえ」

「そうだね。あそこ、」


俺が指を差すと、彼女もつられるように同じ方向を見上げる。


「見える? さそり座」

「さそりには見えないけどね」

「まあそうだね。ほら、あの中で一番強く光ってるのがシャウラ」

「ひとつひとつに名前あるんだ」


彼女は星に興味がない。

俺も、特別好きというわけではなかった。

それでも彼女は、俺の見ているものを一緒に見ようとしてくれた。

いつも、俺のことを知ろうとしてくれていた。彼女の見ている世界を何度も共有してくれた。


それなのに俺は、いったいいつから勘違いをしていたのだろう。

変わらない人間なんていないのに、

いつから俺は、変わらないことを彼女に押し付けていたのだろう。

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変わったのは君だった 朽ちた蝶 @b7trf1y_grj

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