第5話 執事とメイドの次の日のこと
王都のクリスタル家別邸の使用人邸。そのロビーでのある時のこと
「メルトくん。今日休暇もらってましたよね。」
「あぁ、もらったな。それがどうした?カノン。」
「その…メルトくんさえよければなんですけど…一緒に実家に来ていただきたいのです。」
「…お嬢様も付いていくのだろう?俺が行くだけ邪魔になるだろう。なぜ誘う?」
「メルトくん。平民ですよね?…学園の入学試験も受けてないし…学園、入らないおつもりでしょ?でもお父様にお願いすればメルトくんのこと推薦してくれるかなって…そしたら学園でもメルトくんと一緒にいられますし…」
「…そんなに俺と一緒にいたいのか。お前は俺の恋人か何かか。」
「うぅ…いや、その…うぅ…」
顔を耳まで真っ赤にさせながら顔を小さな手で隠そうとするカノン。メルトはその表情を見てため息を吐く。
「いくらお前が純粋だろうと好意も意識も向けてない殿方には言動を考えるべきだ。」
「は、はい…」
カノンの頭から湯気が上がるのを見て取れる。比喩表現でほんとに上がってはいないけど…
「それとその心遣いは感謝するが…無用の長物だ。」
「え?」
「生憎、推薦状ならもらっている。」
「だ、誰からですか?当主様ですか?」
「ネロ・ジュエリ国王陛下から。」
「…冗談ですか?」
「本当だ。一応仕えるところは違えど、国で一番強い者として推薦するって」
「…メルトくん。国王陛下と面識あったのですね。実は凄い名家の生まれだったりします?」
「平民の生まれだ。…6年前。俺が屋敷で働く前の話だ。少し暴れ過ぎてな。その時に俺に手を差し伸べてくれたのが国王陛下だ。…まぁ頭の上がらないお方だ。」
「メルトくんの昔…気になるけど…そうなると今日、どういたしましょう。」
「お嬢様とハロルド様、マロン様で行ってくるといい。どうせそのまま1泊してくるのだろう?いつ行ってもいいのでは。」
「夜に行くと伝えはしたのですが…それまでの間、メルトくんに学園のことを教えるつもりでいましたので…」
「…俺、何時間教えられる予定だったんだ。…なぁ学園の戦闘術の時間ではお嬢様同様レイピアを使うんだよな?」
「はい。自然系統の魔法と共に嗜む程度にしかできませんが…」
「貴族なんてひとつでも戦闘技術身につけてればそれで良しの社会ではあるからな。…夜までまだ時間がある。お前のメイド服の裾のほつれた部分でも直しておくといい。」
「え?ほつれてますか?」
「右側」
「…ほんとにほつれてます。…見つけてくださり、ありがとうございます。」
「あぁ。…俺は自室で本を読む。何かあったら教えてくれ。」
「はい。せっかくの休日ですので…ゆっくりなさってください。」
「あぁ、そうさせてもらう。」
余談ではあるがエミリーたちが別邸に着いて2日の間にもともといた使用人たちの間では既に噂になっていた。「カノン様はメルト様のことを慕っている」と。
あの様子から気が付くなという方が無理。そう言う場面が度々あったのだとか…
「目が合っただけでカノン様が顔を赤くしていた。」
「荷解きを終えてからもわざわざ話しに行っていた。」
「メルト様の話をする時だけ凄い楽しそうだ。」
そして使用人たちの間で2人を除いた会議が開かれた。満場一致で「陰ながらカノン様を応援する!!」となったらしい。
更に余談なのだが、その夜のこと…クリスタル家が総出でエメラルド家に行き、家に居ないことを確認した盗人が入ったらしい。しかし…
「盗人か…あまり面倒事を起こさないでほしいのだが、屋敷に侵入した時点で無理というものか…。」
その次の日、メルトにより8人の盗人が牢獄送りにされた。無論、このことはメルトとハロルドだけの秘密である。
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