無声の心

凪窪空

第1話

あるところに男がいた。

この男は父母兄弟にも恵まれ、何不自由なく暮らしていた。

そんなある日、祖父の弟が死んだ。

その火葬の火を眺めていた。良くも悪くも、その人とは仲良くも悪くも無かったから、涙もなかったが、でもどこか虚しさや悲しさ、なんとも言えない感情がすこし心をよぎった。そんな薄い感情の中、唯一残った感情があった。

この大祖父は孫もいなければ、結婚もしていない。幸せだったのだろうか。彼女もいないし、できた事もないその男には予想もできなかった。

そんな時だった。

自分の体が動かなくなってることに気づく。

身動きも取れず、声も出ず、箱に入れられる。だが不思議と焦りや苦しさは無かった。

何か台のようなものに乗せられ、体が暖かくなっていくのを感じる。

ふと周りを見た時に、兄弟の顔は分かったが知らない人もいた。その中には、あまり深く関わったわけでもない、よく覚えていない少年が自分を見ていた。

なぜか妙に気になって、話しかけようとした瞬間、赤なのか青なのかよくわからない、暖かいものに包まれた。あぁ、こんなものなのか…。私は言い足りないような、満ち足りているような感覚に心地よさを感じていた。

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無声の心 凪窪空 @nagikubo

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