異世界島国、どの道をゆく?ーそりゃ王道だろっ!?
@tantan284
プロローグ
――帝国は、海から生まれた。
ミラトス帝国の最初の都は、大陸にはなかった。
それは五つの島に囲まれた、穏やかな内海に浮かぶ港湾都市だった。
潮の流れを読み、風を測り、船を繋げば、世界は自然と一つになった。
島々は孤立していなかった。
帝国は、剣ではなく航路で国を束ねた。
人は船に乗り、物は海を渡り、情報は波に乗って広がった。
人口は増え、港は拡張され、やがて島国は大陸へと手を伸ばした。
――それが、間違いの始まりだった。
大陸は広く、肥沃で、そして血の匂いに満ちていた。
陸の国々は数を誇り、騎士と軍勢を誇示し、奪うことでしか秩序を作れなかった。
ミラトスは彼らを従えようとした。
海の論理を、陸に押し付けたのだ。
最初はうまくいった。
補給は整い、港は築かれ、交易路が広がった。
だが、帝国は気づいていなかった。
海は「回す」ことで成り立つ。
陸は「抑える」ことでしか従わない。
やがて戦争が始まった。
一国ではない。
幾つもの隣国が、同時に牙を剥いた。
帝国は選択を迫られた。
海を守るか、陸を取るか。
――皇帝は、陸を選んだ。
艦隊は分割され、兵は内陸へ送られ、港への投資は削られた。
五島の航路は次第に細り、補給は遅れ、地方は自立を始める。
北方島は食料を盾に沈黙し、
西部の島々は治安を失い、
中央島は人口だけを抱えて肥大化した。
そして、最初の港――
南東の小島は、切り捨てられた。
「守る価値がない」
「規模が小さい」
「戦争の役に立たない」
それが理由だった。
帝国が忘れたのは、一つの島だけではない。
帝国が帝国であった理由そのものだった。
海を回す思想。
物を作り、運び、支えるという考え方。
それは戦場では役に立たず、数字にも現れなかった。
だから、捨てられた。
時代は下り、帝国は砕けた。
大陸は戦国の世となり、島国は互いに睨み合い、
誰もが「ミラトス帝国は過去だ」と口にする。
だが、海は覚えている。
最初の港が、まだ息をしていることを。
小さな島に、帝国の思想が眠っていることを。
そして今――
そこに、一人の男が流れ着こうとしていた。
剣の才能も、魔法の才覚もない。
だが、物を作り、流れを繋ぐ力を持つ者。
帝国が捨てた始まりの地で、
再び、海が動き出そうとしていた。
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