惑星ボール!?それは星を育てるゲームだった

@tantan284

プロローグ

――それは、遊びではなかった。


それを最初に「おかしい」と思ったのは、音だった。


ボールに触れた瞬間、耳鳴りのような振動が指先から脳に直接流れ込んできた。

電子音でも、効果音でもない。もっと生々しい――何かが、遠くで脈打つような音。


「……心臓?」


思わずそう呟いて、俺は自分で自分を馬鹿だと思った。


闇オークションで落札したその球体は、手のひらに収まるほど小さい。

ガラスのように透明で、内部には淡く光る雲と、点のような陸地が浮かんでいる。

説明文には、たった一行だけ書かれていた。


――育成型シミュレーションゲーム。返品不可。


ふざけた商品だ。

そう思いながらも、俺は返品不可という言葉に目を奪われていた。


指で表面をなぞる。

すると、内部の雲がゆっくりと流れ、光が一瞬だけ強くなった。


その瞬間だった。


《観測対象、確認》


頭の内側に、直接声が響いた。


機械的で、感情がなくて、なのに――妙に「近い」声。


《管理権限、仮付与》


視界が反転する。

部屋の壁も、床も、天井も消え、代わりに暗闇が広がった。

いや、暗闇じゃない。そこには――星があった。


無数の光点の中で、ひときわ小さく、か細く瞬く一つの星。


《あなたは選ばれました》


声が告げる。


《これはゲームではありません》


《あなたの選択は、文明の生と死を左右します》


星が、わずかに震えた。


そのとき、確かに感じた。

あれは錯覚なんかじゃない。


――助けを求める、何かの気配を。


俺は気づいてしまった。

このボールが、ただの娯楽であるはずがないことを。


そして同時に、理解してしまった。


一度触れた以上、

もう、元の世界には戻れないのだと。

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