第2話
「はぁ……」
通学路を歩く足取りが重い。休むかは大いに迷ったが、夢精犯のそしりを受ける覚悟を決めた。
昨日は体調が悪ければ帰っても良いと養護教諭に言われて、素直に応じたのに。謎の女子生徒には一言物申したかった。
おかげでズボンは少し早い衣替え。母親にはイジメ疑惑をかけられるし。素直に伝えるのは内容が恥ずかしすぎた。
あっという間に校舎が見えてきて、何度目かのため息が出る。靴を履き替えて階段を上がり、教室へ入ると挨拶のあとに色々と付け足された。
おめでとうやら赤飯は食べたかなど、散々な言われようだ。まぁ、軽蔑を含んだものはほぼなく、こんなに明るいクラスだったのかと思えたけど。これなら不登校するほどのいじりではないか。
高校生活に希望を持てたが、放課後になってからは急ぎ昇降口で構える。不気味な泥棒も絶対に通るはず。制服の値段を考えると泣き寝入りはできなかった。
「あれ、か……?」
長いくせ毛の黒髪は印象的で覚えている。巨乳だったし。校舎を出て行く背中を追うと、向かったのは門ではなく二階建ての旧校舎だった。
普通に入る姿を見て躊躇する。ボロボロ加減は控えめだが使われなければ当然、劣化していく。とりあえず後ろにも回って安全そうかを確かめた。
二階端の窓にだけ黒いカーテンが垂れ下がる。いるならあそこか?
迷った末、覚悟を決めて旧校舎に入った。木の床は所々が抜ける有様で靴のままお邪魔する。一階は広々とした教室で二階は狭めの教室が続く。
軋みを抑えて恐る恐る端へ行くと気配を感じる。ドアを少し開けて様子を窺うと、例の女子生徒が一人で静かに立っていた。
暗い部屋をロウソクが照らす怪しさに驚かされる。棚には謎の人形や骸骨が転がり、妙なアンティークグッズが並んだ。思ったよりヤバいやつで突撃に待ったがかかった。
テーブルの上には布が敷かれ、何かが積まれている。そこには俺が穿いていたパンツまであるんだが。女子生徒はそこに謎の粉を振りかけるとマッチに火を点け放り投げた。
「おい、おいおい……!」
放火かよと焦ると同時に黒い煙が巻き起こって、スカートが風で揺れる。徐々に勢いは増して棚から物が落ち、カーテンがバタバタとなびいて小さな爆発音が鳴った。
充満した煙を見てさすがにドアを開ける。教室へ入るとすぐに視界は良好になり、女子生徒と対面した。
「平気か!? というか正気か!?」
「ふ、ふふふふ……」
とびきりの笑顔を向けられて後ずさり。完全に狂ってらっしゃる。
「夢精した体液、うなぎの頭、お守り、最後にキノコとハーブのエッセンスを加えるの」
謎の呪文を聞いて首を傾げる。変人相手にはまず合わせるのが正解だろうか。
「どうなると思う?」
くるりとその場で一回転で質問が飛んできた。爆発と答えかけたが、スカートの股間部分が膨らむのに気づく。いや、そんなまさか……。
「もしかして、生えた?」
「夢が叶った」
「お、おめでとう……」
祝いの言葉をかけるしかなく絶句する。人の夢はそれぞれと、高校一年生の夏を目前に起きたオカルトに常識を覆された。
オカルトマニアクス ザ・フルーツポンチ 七渕ハチ @hasegawa_helm
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