最弱魔王の奮闘記

あるべると・のいでん

第1話 新たな魔王の誕生

『魔王が討伐され、新たな魔王が誕生しました。』

 ワールドアナウンスと呼ばれる女神の声が、この世界にいる人全てに届いた。

 

「うわぁ…魔王を討伐するのが勇者じゃないと、新しい魔王に認定されるのかよ…」

 思わず口から漏れる愚痴。

 まあ、確かに異例だろうな。この世界に魔王が誕生して、勇者と聖女が力を合わせて倒す、という最初の出来事から既に千年ほど経つが、魔王が勇者以外に倒される、なんてのは例が無かったからな。


 この世界に最初の魔王が誕生し、人族の国に侵略を開始した事で勇者と聖女が女神に認定され、侵略の魔王を討伐して平定したのが千年前と言われている。

 その後しばらくは平穏な世の中が続くが、しばらくするとまた魔王が誕生し、人族の国と戦争を始める。

 魔王が認定されるとワールドアナウンスが流れ、勇者と聖女が新たに認定され、また魔王が討伐される。そんな事が何度も繰り返されてきた。

 『新たな魔王よ。魔王の使命を其方に伝える。魔王とは【全ての種族を統べる者】だ。その使命を果たせ。』

 女神の声が脳内に響く。コレは俺にしか聞こえていないようだ。先代魔王も、この声に従ったということかな。俺たち『亜人』と呼ばれる種族を人として扱わない人族の王国を力で支配して統一しようとしていたのは、そういうことか。なんか納得できるな。

「でもなあ…戦争は犠牲が多すぎて嫌なんだよなあ…」

 そもそも、俺が先代魔王を倒す決意をしたのは、戦争で仲間が犠牲になるのも、仲間が戦時捕虜として捕らえられ奴隷にされるのも嫌だったから、なんだよなあ…

 勇者と聖女が来れば、魔王以外には相手にならないだろうし…犠牲が多すぎるんだよな。

 だから戦争回避するために魔王を倒す以外無かっただけで、それも『最弱』と呼ばれる魔法しか使えない俺だから倒せたんだろうとは思ってるんだけど…

 この俺が魔王として、数の暴力を体現するような王国の人族相手に戦うなんて、無理無謀だよなあ…どうにか回避できないかなあ…

 そんなわけで、俺が魔王として滅ぼされずに済む方法に頭を悩ませていた。


 ここで、この世界のことを説明しておこう。

 この大陸、アラニスタ大陸には、大陸を横切る大山脈を境に、大陸の約2/3を占める大山脈の南側に位置するアルミナ王国。ここは人族が支配する国である。

 その昔、複数の国家からなっていたものを統一した国だ。人族以外は人権を認めないアルベスタ教を国教として、純粋な人族の王族を支配者とした国だ。肥沃な土地も多く、非常に栄えており、ほとんど魔力を持たない人族であっても人数が非常に多いので大量の人数による人海戦術で戦ってくる。まさに数の暴力だ。

 それに比べて、純粋な人族と異なり、多くの魔力を持ち、人族よりも優れた特性などを持つことの多い亜人種族と、人族との混血、亜人差別が嫌になった人族で構成されているのが我らのミッドガル帝国。アラニスタ大陸の北側に位置するが、土地的にも狭く非常に作物の育ちにくい土地に追いやられている。まぁ、人数も王国に比べたら少ないので、一人当たりの土地の広さは王国よりも広いのだろうが、大半が農耕地として適していない。とはいえ、戦争では人数で敵わなくても魔法を扱えたり人族より優れた特性などを持つ事で人数差を解消しているようなものだ。俺が倒した先代魔王などは槍の一振りで千人程度の人族を相手にしていた位で、アルミナ王国の数の暴力に拮抗できているのは、そう言った個々の能力差を活かしているからに他ならない。

 本来魔法が使えない種族の人族だが、稀に魔力を持ったものが生まれる。そんな人族が魔法を覚えて戦争に加わると総力戦で戦うことになってしまう。

 大陸を二分する戦争が長引けば、戦わない子どもたちにも影響が出てしまう。かと言って短期決戦を目指すには戦力が均衡しすぎている。

 人族の国の魔法戦力の情報を掴んでいた俺は、魔王に戦争を止めるよう進言したのだが、却下され、そして魔王を倒すことになった、というわけだ。

 

 まぁ、俺は魔王や他の上層部にも雑魚扱いされていたし、一対一ならそれなりに勝算があるから倒せたんだけど、一対多の戦いでは役に立たないし、パッと見では人族と変わらないから情報収集がメインだったしな。舐められるのも仕方ない。

「で、だ。このあとの方針、考えないとなぁ…無策のまま勇者に倒されるのを待つのは嫌だしなぁ…」

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