お汁粉セレブレイション

東間 澄

お汁粉セレブレイション

小さい頃から、お祝い事にはお汁粉だった。


「お赤飯じゃないの?」

私が聞くと、母は答えた。

「お赤飯もお汁粉も、小豆と餅米。ほら、一緒!」


母は大雑把だ。

父も似たようなもので、俺も甘いものの方が好きだしいいんじゃない、と言っていた。


お誕生日、入学式、卒業式、合格祝い、父の昇進祝い。

「はい、召し上がれ!」

全部、母の甘いお汁粉。


ケーキには合わないよ、と兄が言ったことがある。

いいのよ、お祝いだもの!と母は笑っていた。


26歳で付き合い、5年の交際を経て、31歳でやっと婚約。

母はその時も甘いお汁粉で祝ってくれた。

お互いの両親への紹介まで終わったところで、彼から「好きな人ができた」と言われた。


関東の片田舎から、逃げるように東京の会社に転職。

「年度途中の転職だから、何かと忙しくてさ」

お正月には、帰省できたがしなかった。


共通の友人から、先月彼が結婚したと聞いた。


よくある話、陳腐な展開。

まさか自分の身に起こるとは思ってなかったけど。


「元気にしてる?お盆には帰っておいで」

母からの連絡。


縁側で寝ていたら、お汁粉が出てきた。

暑いのに。

お椀を持っただけで額に汗が伝う。


隣に母が座った。


就職祝いもできなかったしね。

結婚どうこうじゃなく、あなたがちゃんと自分の足で立ってること。

それが何よりの誇りだ、と母は言った。


視界が滲み、母の言葉は途中から、俯きながら聞いた。


話し終えて私の方を見た母は、一瞬手を伸ばしかけ、引っ込めた。


「はい、召し上がれ」



塩気の効いたお汁粉は、いつもより甘かった。

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お汁粉セレブレイション 東間 澄 @azuma_sumi

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