脚本

 夕日が照らす小会議室。3人が囲む丸机には、大きくA・Bと書かれた脚本が置いていた。



A脚本 概要

家族を魔王に殺された主人公は、復讐のため友人と旅に出る。道中、同じく魔王に恨みを持つ者や最強魔術師と出会い、魔王討伐メンバーは16人になる。

やがて友人の正体は魔王だという事実が判明する。突如とした魔王の登場に、次々と倒れていく仲間たち。グルだったのではと疑われる主人公。

最終的には討伐に成功するも、友人や信頼を失った主人公はどこかへ彷徨ってしまう。



「どうです? この脚本なら16人全員の個性も表現でき、主人公の葛藤も描ける」

「赤川先生……」


 Aの提案者・赤川の自慢げな態度に対し、中森は頭を悩ませていた。

 次に中森は、Bの脚本にそっと目を寄せた。



B脚本 概要

国王の娘は、父に会うために乗った船が遭難し、とある離島で一人になる。しかし原住民の温かい支援を受けながらそこで生活し、やがて娘は島の長である青年に恋をする。

ただ、その離島は娘の国の敵対国だった。国王は娘の居場所を知ると、拘束されていると勘違いし、原住民を皆殺しにするよう軍に命令する。

無実の罪で殺される人々。そして目の前で島の長が斬首刑に処されるのを見た娘は、その夜に自害してしまう。



「私の脚本のテーマは、愛と正義の真髄です。今にこそ伝えるべきものでは」

「青田先生……」


 Bの提案者・青田の冷静な呟きに中森はさらに頭を悩ませる。


 するとB脚本を読み終えた赤川がフンっと鼻で笑った。


「そんなロミジュリみたいな話、今どきウケねぇよ」

「あなたの厨二病ストーリーよりかは、はるかにマシかと」

「あぁ!? なんだと!」

「Aには考えさせられるものがひとつもない。だいたい……」


「赤川先生! 青田先生!」


 ドンっと机を叩く音に、にらみあってた二人は中森に視線を移す。

 中森は鋭い眼差しで、こう告げた。


「結論から言わせてもらうと、A案B案いづれも没です」


「そ、そんな……なんでですか?」

「私達、徹夜で考えたのですよ」


 衝撃の回答にその場でうなだれる二人。

 中森は大きなため息をつきながら、理由を一言で済ました。



「だってこんな重いストーリー、お遊戯会で子どもたちにさせれるわけないでしょう」


 二人を脚本係にした自分がバカだった。

 園長先生の中森はそう思いながら、去年の脚本「おおきなかぶ」を引っ張り出し、決定印を押した。

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