第20話 また日は昇る
余韻も束の間、櫓が大きく揺れる。倒壊が始まっていた。
「くっ……はやく脱出しないと」
来た道を戻ろうと、炎を避けながら階段方面まで行くが──。
「階段が崩れてる……こっちは駄目か……」
部屋まで戻り、脱出路を探す。抜け道などはなく、あるのは先程の"稽古"で壁が抜けた窓方面だけだ。
「ここは何階かな……行くしか、ないか……!」
意を決し、吹き抜け方面へと走りだす。
部屋がどんどん建物の内側に崩れていき、出口が遠ざかっていく。
「くっ……空が遠い……!」
斜めになっていく地面は意地悪に空を遠くしていく。
視線を下に向けると地獄の焚火のように見え、肌をジリジリ焼いていく。
「……"黒麒麟"!」
相棒を何とか壁に突き刺し、宙ぶらりんの形になった。
「まだいけるよね……"黒麒麟"。飛ぼう」
決心と共に、空を見上げる。そして、櫓が完全に崩落していく──。
***
「あぁっ! 櫓が!」
激しい音を立てながら崩れていく櫓を眺めるサクヤたち。
青ざめたサクヤは膝から崩れ、ヒナタに縋った。
「ヒナ、ヒナねぇ! ミィが! ミィが!!」
「大丈夫、ミツキは平気よ」
「だって! 櫓がもう、もう!」
焦げ落ちた櫓を指差しながら叫ぶ。
「……」
ヒナタは10年前の景色を思い出す。当時は暴走する力に恐怖していた子どもだったが、今は違う。
「サクヤちゃん」
彼女の頭を撫で、優しく語りかける。
「大丈夫。ほら、見て? 日の出よ」
櫓の方面、地平線から太陽が昇っていく。──日の出に、黒いシルエットが重なる。
「えっ」
「ミツキはいつも、遅刻するから」
笑いながら呟く。
「それでも、絶対に来てくれる」
シルエットが近づいてくると、ようやく姿が見えるようになる。
「おーーーい!」
右手で黒い刀を掲げながら、上空からゆっくりと降りてくる。
「ミツキ……!」
「ミィ〜!!」
煤に塗れ、全身汚れた状態だ。地面に降り立つ瞬間、少しふわっとしながら着地する。ふたりはミツキに駆け寄った。
「ヒナ、サクヤ……」
ミツキはふたりの顔を見つめ、笑いながら言った。
「ごめん、待った?」
朝日に照らされながら、三人は笑い合った。
次の更新予定
2026年1月12日 19:00
いのりと 月影の堕天使 ミツキと贖罪の太陽 霧川 紗雪 @Sayuki_Kirikawa
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