第12話 負けられない戦い
「ヒナ……助けに来たよ」
櫓最上階、ついにミツキはヒナタと再会する。
横で見ていたカマンセーヌは握る拳にぐぐぐと力が入る。
「血の目が……! ボクのジャマをするか!」
「カマンセーヌ! これ以上はもう止めにしよう」
「止める? 止めるのはキミの蛮行だよ!」
少し遅れてサクヤが入室し、ミツキの後ろに立つ。
「ヒナねぇ!」
「サクヤちゃん!? どうして戻ってきたの!」
「わたしも、わたしだって戦う!」
フライパンを両手でギュッと握りしめる。戦えるような少女ではないが、決意が伝わってくる。
「くそっ、ダルシアン! キミの失態だよ、なんとかしろ!」
「……」
傭兵はぶっきらぼうに大剣を構える。ミツキは警戒しつつも、一歩前へ動く。
「ダルシアン……どうしてあなたはカマンセーヌに協力するの?」
「依頼主だからな。金払いもいい」
「言っておくけど、ヒナタ・ナツゾラを取り逃がしたら報酬はなしだよ」
依頼主が口を挟んでくる。
「だ、そうだ。お嬢さんには悪いが仕事でね」
「仕事……。だったらなぜ櫓のことを教えてくれたの? 教えなければここには来れなかったよ」
「なっ、ダルシアン! キミは!!」
カマンセーヌは思わず傭兵に近づくがそれを無視し、武器を降ろして一歩前へ出る。
「赤い瞳になると……やっぱり似てるな」
「似てる……?」
「──俺はお嬢さんが気に入ったんだ」
「……」
「怖い顔するな、変な意味じゃねえよ。お嬢さんの腕や胆力、どれも申し分ない。実戦慣れしてなかったみたいだが、それを差し引いても充分過ぎるほどな」
「なにが言いたいの」
「俺たちの傭兵団に入らないか? ここまでこれたって事は部下たちを倒してきたんだろ。腕試しに送ったが、実力は本物みたいだしな」
「なにを、言ってるの」
予想外の言葉に、思わず詰まる。
「アサヒミナで"魔神器"を使わなかったのは、町の連中の目を気にしてだろ? 堕天使差別で迫害はされたくないもんな。うちの傭兵団なら種族なんか気にする奴はいねえし、なんなら堕天使の団員も活躍してる。どうだ、悪い話じゃないだろ」
「……」
確かに人の目を気にしていたことも理由の一つではある。堕天使でも腕っぷしを認めてもらえるのなら魅力的でもある。しかし──。
「断るよ」
「ほう、どうして」
「雇われば町を襲ったり、腕試しとか言って部下を捨て駒にするような傭兵団とは組めない。それに……」
サクヤの頭に手を乗せ、ヒナタを見つめたあと、再び傭兵に向かい合う。
「私には守る人がいる。大切な人がいる。ふたりがいるから、私は私でいられるから」
「そうか……残念だ」
彼は肩をすくめた後、両手でゆっくりと大剣を構え直す。
「俺の仕事は旦那を守ること、そして神子の保護。お嬢さんの言う"大切な人"を返して欲しければ俺を倒してみな」
「……サクヤ、入口まで下がってて」
「ミィ……負けないで」
サクヤは扉があった場所まで小走りで移動する。
戦いが始まる気配を察知したカマンセーヌはヒナタまで近づく。
「来い! キミはこっちに──」
「触らないで。この期に及んで逃げたりしないわ」
ヒナタは入口とは反対側、部屋の奥まで移動する。カマンセーヌは苛立ちながらもそれに付いていく。
「ふん、今度妙な動きをしたらお友達の命はないと思いなよ」
「ここで何かをするということは、ふたりの戦いに水を差すことになる……そんなことはしないわ」
「町でのことを覚えていないのかい? 血の
「勝つわ」
「は?」
「勝つわ、ミツキが」
一片の迷いもなく、ミツキを見つめながら言った。
貴族は鼻を鳴らし、ヒナタの監視とダルシアンの動向を確認できるよう窓付近にもたれかかる。──誰にも気付かれぬよう手を後ろにし、魔法陣を展開し始めた。
「……"黒麒麟"、私に力を貸して」
ミツキは刀身を見つめ、祈りを込める。瞳がより赤く輝き、黒い風が
「もう迷わないみたいだな」
「"魔神器"も、堕天使の私も、人間の私も、すべて私だから」
「……そういえば、ちゃんと名乗っていなかったな」
彼は思い出したかのように放った。
「俺はセッター傭兵団、ダルシアン隊隊長アーノルド・ダルシアン。お嬢さん、あんたは?」
「ミツキ・フユウミ……肩書なんて何もない、ただのミツキ」
「お嬢さん……いや、ミツキ。手加減なしでいくぞ!」
ふたりは同じ瞬間に斬りかかり鍔迫り合いになる。
力は互角、お互い退こうとはせず、均衡とした瞬間が続く。
先に動いたのはミツキ、体を捻り回し蹴りを浴びせた。
「やるな!」
彼はのけぞるがすぐに持ち直し、一歩下がる。
「戦いは武器だけがすべてじゃないことが分かったみたいだな!」
嬉しそうに叫び、斬り込んでくる。
きっちりと攻撃を防ぎ、振り払った。
「だったらっ! 武器を捨てて戦う!?」
「悪くねえがまだまだこれからだろ!」
ふたりは激しい剣戟を交わす。その様子は殺し合いというより、踊っているかのようだった。
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