地味な幼馴染を、S級ヒロインに育成しようと思います

フミオダ

第1話

 ダンジョン都市トウキ。

 都市のど真ん中には大きなダンジョンがそびえ立ち、都市を構成する町にもダンジョンがあり、都市はダンジョンの資源で成り立っている。

 そのおかげか都市の人口は多いし、商業施設だったり、娯楽施設も多い。町は栄えている。

 そんな所で育つと流行とかにも敏感になる。




 高校に進学する前の春休み。

 地方に引っ越していた幼馴染が、親の仕事の都合でまた地元に帰って来ていた。

 引っ越し当日に俺の家に挨拶に来た。どんな風に変わったのか気になり、俺も同席した。

 幼馴染のアイセ・サナは変わっていた。昔と比べて垢入りしていた。抜けじゃなくて入りだ。

 何があったのかと思った。

 黒い髪は背中まで長く、前髪は重たい。眼鏡は掛けていなかったが、自信なさげで猫背。外に全く出ていないのか、真っ白だ。

 本当に何があった。


 「アオイくんと同じ高校に、紗奈も登校するから、これからよろしくね」


 「あ、はい。よろしくお願いします」


 頭を上げると、俯き加減のサナと目が合う。

 しかし、すぐに逸らされる。

 アイセ家が引っ越したのは小学生五年生の春頃。

 俺の記憶の中のサナは、活発で、肌も少し黒く、男子たちに混ざるぐらい活動的だったように思う。

 今とは正反対だ。

 あんまり容姿のことはとやかく言えないから、直接詳しく聞けなかったが、引っ越し先で何かあったのだろうか。

 気になり母親にそれとなく聞いてもらったが、引っ越し先の学校であまり馴染めなかったそうだ。

 環境が違うとこうも変わるのか。

 それからあまり話すことなく、春休みはすぐに終わり、一ヶ月が経った。


 「うわぁ、やっぱりルーたんかわえぇなぁ」


 「顔凄いぞ」


 魔道具の一つ、スマホを眺める高校で知り合った友人、タクトをゴミのような目で見る。

 一カ月も経てば、ある程度人間関係の構築が出来てくる。


 「えぇ?なんて?」


 「いや、顔が崩れてる。絆されすぎだろ」


 顔が凄いニヤニヤしてて気持ち悪い。

 タクトが見ているルーというのは、魔法によって構築されたインターネットで配信をしている、ルナという活動者だ。

 スマホで撮影されたデータを情報として、インターネットを介して相互に他のスマホが受信している。

 ルナの活動は、ダンジョンでの様子だったり、雑談をメインとしている。

 白髪に銀色の瞳。目鼻立ちが整った容姿端麗さと、見た目とは裏腹なダンジョンでの活動、またアニメのキャラに似ていることから人気を博している。


 「次魔法の実習あるから移動教室だぞ」


 「あーそうだった。行かないとな」


 「スマホ持っていくのかよ。バレたら没収されるぞ」


 「大丈夫大丈夫」

 

 スマホの画面を見ながら、教室を出ていく。

 バレそうだなぁ。

 俺はタクトの後を付くいていくと、廊下から他の教室が見える。

 サナがいた。

 教室の席に一人でいる。周りに透明な壁があるように、誰も寄り付かない。


 「どうしたアオイ?」


 勝手に足が止まっていたようだ。


 「何でもない」


 別の棟にある実習室に向かう。

 今日も特に何もなく放課後を迎える。いやある。課題を出し忘れたからって、荷物運びを任されてしまった。

 二階から見える外は、オレンジ色に染まっている。

 雑用なんて終わらせて帰りたい。


 「アハハハハハ」


 階下から唐突に甲高い笑い声が聞こえる。

 誰だろうか。

 階段から見て、ギョッとする。

 サナを見下ろすように女子三人が囲っている。




 どうしてこうなんだろう。

 大人しくしていると、こうやって意地悪される。私は何もしていないのに。

 怖くて下しか見れない。

 怖い怖い。早く終わってほしい。どこか行ってほしい。


 「ねぇ、お前みたいなのがリュウセイ君と話さないでよ。目障りなんだけど!」


 強めに押され、思わず尻もちをついてしまう。

 耳障りな甲高い笑い声が響く。

 

 「私は別に…リュウセイ君は授業のことを聞いてきただけで……」


 「あぁ?聞こえねぇよもっとでかい声で話せよ」


 「その……」


 駄目だ。怖くて声が上手く出せない。

 誰か、誰か助けて。


 「きゃ!な、何!?」


 足に水滴が付く。

 

 「上から水が飛んできた!」


 「誰だよやったの!」


 その言葉を皮切りに、私を囲っていた、カナさん、ミサキさん、ヒカリさんが階段を上っていく。


 「あ、ハセガワ先生!」


 「お前たち、焦ってどうしたんだ?」


 先生だ。これで助けてもらえる。


 「私たち、水掛けられて…誰か見てませんか?」


 「そういえば、誰かあっちに走っていったな」


 「先生も犯人探してもらえませんか?」


 「ああ、別に良いが」


 そうだよね。先生をここに置いていく訳ないよね。

 それに先生に事情を説明して、いじめがヒートアップするのも嫌だな。

 また黙っていないと。

 足音が聞こえなくなり、冷え切った体に鞭を打って、立ち上がる。

 早く帰りたい。


 「大丈夫か?」


 人の声が突然聞こえてびっくりする。


 「あ、ごめん。俺だよ」


 顔を上げると、アオイくんが立っていた。

 子供の頃から変わらない、安心するような笑みを浮かべて、私の様子を伺っている。


 「もしかして、今の水アオイくんがやったの?」


 「そうだよ。ムカついたから魔法でやった」


 あっけらかんと言うので、私は呆けてしまう。


 「一緒に帰ろう。あいつらどっか行ったし、もう戻ってこないよ」


 私の冷たい手を引こうとする。

 その昔と変わらない優しさに、溜まっていたものが崩壊してしまった。


 「お、おい大丈夫か?」


 頬を涙が伝う。


 「助けて」

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2026年1月10日 14:00

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