ファンタジー作品を世界観の独自性で測るのであれば、本作は文句なしの高得点ですよ。
本作の舞台となるのは、竜から人類を防衛するために断崖に建てられた巨大な構造物《クウォーター》。そこでは「竜刑者」と呼ばれる囚人たちが暮らしており、彼らは竜の襲来に備え、日々クォーターの修繕と増築を延々と続けていく……いつか竜に殺されるその日まで。
この舞台設定が実に素晴らしく、竜が襲来することを前提にした施設のため、実際に竜が来たら何人も殺されるのだけど、竜が来なければ今度は食料不足によって餓死者が出るという超絶ブラック施設。平時の仕事の内容も一日中ずっと超高層ビルの工事をしているようなもので、少しでも足場を踏み外せば即落下死という日常が展開されるわけですが、そこで暮らしている人々の生活描写の解像度が大変高い。終わりのない過酷な労働の上に、いつ竜が来てもおかしくないという悪夢のような日常の中で、心をすり減らす人々の様子がしっかりと描かれます。
この日常の描写だけでも陰鬱な気持ちになってしまうのですが、その陰鬱さを悪い意味で吹き飛ばすのが竜の襲来。この世の終わりのような環境かと思っていたら、より具体的な形で終わりがやって来るという絶望感が凄まじい。
あまりにハードすぎる設定で楽しそうな描写がほとんどなく、やや人を選ぶかもしれませんが、ダークファンタジー好きの人なら決して見逃すことのできない一作です。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)