終章 清流人

「僕は、ミズキ。ありがとう、ロビンを返してくれて」


 鉄格子は白い何かの上に乗っていた。ああ、これが、神話の清流人スイマ―か。なんて雄大だ。


 白い巨大な手がロビンを大事そうに抱えている。心なしかロビンも嬉しそうだ。


 俺は牢屋から、巨大な清流人スイマ―の顔を見あげる。子供だ。本当に大きい。


「地上にも君のようにがいるんだね」


 俺は叫んだ。祖母の寝物語と伝え聞いた神話で、この人たちがアメを降らせられるのを知っているからだ!


「ミズキさん! お願いです! 地上にを! 俺たちにもう一度チャンスを貰えないでしょうか?」


「ごめんね。、駄目なんだ」


「なんでですか! 皆にを思い出してもらいます! 俺が何年たっても絶対に!」


「そうじゃないんだ」


「なぜ?」


「それはまだ、僕が子供のだから」


ですか? 地上にいるあの八本足の?」


「はは、そっちの蜘蛛じゃないんだ。けど約束する僕が大人のになったら地上にを降らすと」

 

「あ、ありがと――」


 必死で気付かなかったが、息がうまくできない。意識が遠のく。


「ああ、ごめんね。君達には空気が必要なんだ。大丈夫。僕が地上に送り返すよ」


 優しい声と共に体が浮かび上がる。


「アリガトウ! サヨウナラ! フォ―スサン! マタアウヒマデ!」


 ロビンの別れの声を最期に俺の意識は、安らぎの揺り籠に寝かしつけられた。




 十四年後


「ねえ、パパ。暑いよお。早く、帰ろうよお」


 息子のロビィが駄々をこねる。仕方がない今日はこれで引き上げるか。ロビィと一緒に、穴から出る。


「どう? 地下水は?」


 妻のバミカが外で待ってくれている。


「ママ!」


 ロビィがバミカに向けて駆けだす。ああ、のどかだな。あれから、まだ、は降らないが、妻と、息子のいるこの平穏な毎日は幸せだ。


「ねぇパパ?」


「ん? 何だい?」


「あの空に浮かぶ白いのは何?」


 ああ、頬を水が伝う。


 熱い体内からの水は、天上から降り注ぐ清涼な水で流される。


 ああ


 。ロビン。


 。ミズキさん。

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天上の大海原 CだCへー @dasyo117

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