第六話 天上への鍵

「どうするの?」


 バミカが尋ねる。


 俺達がアメを食べ終わるころには月が高く昇り、街を眠りの闇で静かに染めていた。


「下の様子はどうだった?」


「アズホ―さんが、一階で族長を必死に説得してるのよ? 多分まだ頑張ってくれてるわ」


 アズホ―親方ありがとう。


 本当に感謝しかない。でも、だ。恐らく、俺もロビンもこのまま、ここにいても碌なことにはならないだろう。


 いや、俺達だけでなく、バミカまで。


 けれども、牢屋からの脱走は失敗すると、確実に絞首刑送りだ。


 どうすれば、せめて、バミカだけでも――――――


 俺はバミカを見る。バミカと視線があってしまい、見つめ合う。


 暗闇で見えなくても、俺達潜伏人モグラニアンは、お互いが見えてしまう。バミカも俺も慌てて目をそらす。


 バミカの頬は赤く染まっていた。きっと、俺の頬も同じなのだろう。


 ! 

 

 思考を固め、最善の、いや、最高の明日を掴むため、考えるんだ。そうだ、ロビンには何か手が無いだろうか?


 コブワームの時ような派手な奴意外でだ。


「ロビンは、何か静かにここから、出る方法はないか?」


 俺は、静かにを強調する。


「ムリ! ワタシ! ヤクニタテナイ! ゴメンナサイ」


「いや、いいんだよ。あの時のように安易に助けを求めた――――――」 


「どうしたの?」


「バミカ! 今すぐ、族長たちを、ここに連れてきてくれ!」


「何で? きっと族長は私達、潜伏人モグラニアンの言うことには耳を貸さないわ」


「大丈夫だ! 俺とロビンを信じてくれ!」


「エエ! フォー、サンヲシンジテ! ン?」


「お前の力がいるんだ! ロビン!」


 俺は光るロビンの目を見つめる。


「わかったわ。信じるわよフォース、ロビン」


 バミカが暗闇の塔内に消えていった……


「ワタシハ! ドウ、レバイイ?」


「ああ、ロビン作戦は――」


「作戦が、何じゃね? フォ―ス」


 床の鉄格子の下には、煌びやかな宝石と、ヨツコブラクダの綺麗な衣装の族長がこちらを睨んでいた。


 近くではバミカがロープで縛られている。


 クソ! 最悪なタイミングだったか!


 いや、やるしかない!


 俺は謝罪の意識を前面に押し出し、言葉を夜闇に溶かす。


「族長、まずは、この度は、誠に申し訳ございませんでした。ロビンを利用し、混乱を招いたのは私の失態です。また、バミカに鍵を取ってくるように命じ、彼女も共犯者にし、この街に大きな混沌を作り出してしまいました」


 バミカは身を捩らせ必死に涙と共に叫んだ。


「違います! 私が! 勝手に鍵を!」


「おい、黙らないか! 鍵泥棒め!」


 警備兵がバミカのロープを締め上げ、苦悶の声を漏らすバミカ。


 怒るな俺! 我慢だ! ここで、感情を発露したら全てが終わる!


 歯を食いしばる。


 族長はしわの刻まれた険しい表情を崩さず、口を開く。


「イイ心がけだ。では、鍵泥棒を命じたフォースお前のがいいかね? 安心したまえ、無論、彼女は被害者として扱い、日常に戻ってもらう」


「ありがとうございます」


!」


 アズホ―親方が肩で息をし、こちらを見上げる。俺達、潜伏人モグラニアンのために必死になって駆けつけてくれたのだろう。仕事中でも見たこともない汗と、肉体の上気を感じる。


「フォ―ス! 俺が何とかするから! お前は牢屋でじっとしてるんだ! 族長も、フォ―スもロビンも、バミカもこの街の発展にきっと貢献してくれます! どうか、改めて、御一考を」


 アズホ―親方は族長に頭を下げ、懇願する。


 族長は、目線も、表情も崩さず、俺の眼を睨み上げる。


「ならぬ。フォ―スは自分の罪を認め、彼女の罪も引き受けた。故に! これよりも、重い罪は絞首刑――」


 

 

 俺は族長の言葉を遮る。


「族長、待ってください。私は罪を認めます!」


「? ああ、だから」


「そして、この塔ではのが法律です」


「そうだ、だから、ここが最上階だから、これ以上重い罪は――」


「いえ、がありますので、俺とロビンはで刑を受けます」


「なにを言ってるんだ? フォ―ス?」


「フォ―、サン?」


 俺はあの時のようにロビンの手を握りしめる。ロビンの目を見て叫ぶ。


「ロビン! ここはだ! 助けてくれるか?」


「ッ! ハイ!      



 ロビンの靴から、コブワ―ムの時と同じように、夜を吹き飛ばす赤い炎が噴射される。ロビンは右手で俺の手を掴み、左手で牢屋の鉄格子を掴む。


 いともたやすく浮き上がる牢屋。


 よかった。成功だ!


 そうだ! 下で呆気にとられる皆に叫ぶ!


「これより、私フォ―スは、ロビンと一緒によりされまあす! また、バミカはですのでおねがいしまあす! 罪の清算が終わり次第釈放をお願いしまあす!」

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