第3話 同期会
研修初日の夜、同期会が開かれた。
店に入った瞬間、研修会場とは別の空気が広がる。
橘「じゃあ、とりあえず。
お疲れさまでした!」
グラスが一斉に上がる。
佐野「初日から情報量すごくない?」
橘「途中から、
覚えるより耐える時間でしたね」
笑いが起きる。
凛は、迷わず橘の隣に座る。
凛「学生の時も、
絶対目立ってたでしょ〜!」
橘「どうだろ。
部活やってただけです」
凛「それがもう怪しい」
彩乃は、美咲の隣でグラスを持った。
理由はない。
でも、胸の奥に小さな引っかかりが残る。
橘「でも、
みんな反応早かったですよね」
橘は話題を全体に返す。
一人に向けない。
場を広く使う。
美咲「同期、当たりかも」
彩乃「……うん」
凛は分かりやすく楽しそうで、
橘はよく笑うけれど、線は越えない。
彩乃は、その間にいた。
好きじゃない。
でも、無関心でもない。
まだ名前のない感情を、
そのままにしておいた。
店を出ると、夜風が少し冷たかった。
佐野「じゃあ、また明日」
それぞれが、ばらけていく。
彩乃は、美咲と並んで歩いた。
美咲「思ったより、落ち着いてたね」
彩乃「……うん」
美咲「疲れてない?」
彩乃「……大丈夫」
橘と凛の笑い声が、少し前から聞こえる。
見ないようにもしなかった。
角を曲がるところで、橘が振り返る。
橘「小川さん」
彩乃「はい」
橘「今日は、
お疲れさまでした!」
彩乃「……お疲れさまでした」
橘「また、明日」
それだけ言って、戻っていく。
近すぎない。
でも、遠すぎない。
美咲「……話しやすい人だね」
彩乃「……うん」
それ以上、何も言わなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます