隣で見た笑顔に、恋をした
イーさん
第1話 研修会
研修会場は、朝からざわついていた。
同じスーツに、同じ名札。
それだけで、少し息が詰まる。
小川彩乃は、資料を揃えながら空いている席を探していた。
前に出る気はない。
でも、端に寄りすぎるのも違う。
そう思って腰を下ろした瞬間、隣の椅子が引かれた。
橘「すみません、ここ空いてます?」
彩乃「……はい、大丈夫です」
橘「ありがとうございます。
助かりました」
明るくて、迷いのない声だった。
名札を見るまでもなく、
その人が橘陽向だと分かる。
背が高く、姿勢がいい。
スーツも、着せられている感じがなかった。
橘「初日から研修って、なかなかですよね」
彩乃「……ですね」
橘「正直、資料見てるふりして、
全然頭入ってないです」
彩乃「……即答ですね」
橘「こういうの、
強がると後でしんどくなるので」
軽く笑う。
場を無理に盛り上げないのに、
空気だけは柔らかくなる。
研修が始まると、橘の雰囲気は少し変わった。
私語はしない。
でも、周りをよく見ている。
質問が出ない空気の中で、自然に手を挙げた。
橘「今のお話って、
現場だとこのケースも含まれますか?」
講師がうなずき、説明を補足する。
場が止まらない。
彩乃は、隣を見る。
彩乃「……さっきの質問、分かりやすかったです」
橘「ほんとですか。
それならよかった」
彩乃「空気が、止まらなかったので」
橘「それは狙いました」
彩乃「……狙ってたんですね」
橘「止まると、
みんな余計に緊張するじゃないですか」
彩乃「……確かに」
ONとOFFが、はっきりしている。
でも、その切り替えはとても自然だった。
それを見ていたのは、彩乃だけじゃなかった。
高瀬凛も、橘の方をよく見ていた。
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