坊主頭と秋
ゆめいちごひいな
第1話
気づけば秋。トモユキの坊主頭は、やっと指先で摘める程に伸びてきた。
部活帰り、校門をくぐると未桜が待っていた。それだけで心臓が高鳴っていた。
「やっほ。トモユキ。」
いつもトモユキくんだったのに呼び捨てになったことに気づかないフリをして、
「おっす。」と言う。
「あのさ、桐生くんってもう帰った?」
その未桜の言葉を聞いた途端、一気に落胆した。階段を踏み外した時の、あのガクッとなる感覚が俺を襲った。
桐生というのは俺と同じ野球部で、学年で一番モテるイケ男だ。桐生はまだ部員と練習している。言いたくなかったけど、
「まだ練習してるぜ。」と言ってしまった。
「そっか。」未桜は素気なく言った。
きっと桐生が帰るまで待つつもりなんだろう。
「私、来年野球部入りたいなーって思ってんだよね。マネージャーでもいいんだけど、ルールとかやり方とか知ってた方がいいでしょ?私球技苦手分野だからどうしよっかなーって。」
未桜は一気に言った。この学校は一学年7クラスもあるし、桐生に近づくチャンスなんて部活くらいしかないのだろう。
「どうしたらできるようになるかな?」
そんな事聞かれても。どうせ桐生目当てだろ。まあそういう女子沢山いるけど。
「才能じゃね。後、努力…。」
腹が立っていた俺はぶっきらぼうに言った。そう言う俺は才能がある。でも努力する力はない。苦しい時に踏ん張る力がないのだ。だから、重要な大会の時俺は外される。
未桜は才能と聞いた時しょげたが、努力と聞いてまた立ち直った。
「私、努力するから。トモユキくん教えてくれない?野球のこと。」
なんの宣言?なんの頼み?てかトモユキくんに戻ってんだけど。
無理って言いたいのに「別にいいけど。」
とか言ってしまった。
「ありがと!!!!!!」
屈託のない笑みを浮かべて言う未桜に見惚れてしまう自分を殴りたかった。本当に都合が良すぎる。未桜の頼みをうけたのも、多くの時間未桜と一緒にいられるかも、なんて思ったからだ。どこまでも俺は馬鹿だ。でも、
「その笑顔俺だけのね。」
そう言って去っていった時の俺はちょっと、いや結構好きだったけど。
坊主頭と秋 ゆめいちごひいな @YumeichigoHina
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