第39話:帰還と雷鳴

第39話:帰還と雷鳴


子供たちを保護し、夜明け前にギルドへ戻ったウルガたち。


疲労と安堵が混じった足取りで扉をくぐった、その瞬間だった。


「――ウルガァァァ!!」


雷が落ちた。


ギルドホールの中央に立っていたのは、鬼の形相をしたギルドマスター、ヴァルド。


その隣には、腕を組み、珍しく本気で怒っているリーナの姿。


「勝手に飛び出すなと言っただろうが!」 「しかも相手は賊、しかも子供絡み!? 自分の立場を理解してるの!?」


逃げ場はない。


ウルガは肩をすくめ、完全に縮こまった。


「ご、ごめんなさい……」


説教は、長かった。


危険性。


判断の軽率さ。


ギルドに属するという意味。


途中から何を言われているのか分からなくなり、ウルガの目にはうっすらと涙が滲む。


「……もういい」


ようやくヴァルドが手を振った頃には、ウルガは完全に涙目だった。


「部屋に来い。報告を聞く」


ギルドマスターの部屋。


椅子に座り直し、ウルガ、セレナ、バステト様が一列に並ぶ。


ウルガは、今回の事件で起きたことを順に説明した。


闇ギルドの存在。


廃教会。


そして――


「……シュマカが、現れました」


その名を聞いた瞬間。


ヴァルドの顔が、目に見えて強張る。


「……また、あいつか」


額を押さえ、深く息を吐く。


「真似事じゃない。本物が出たんだな……」


重く椅子にもたれかかり、しばらく黙り込むヴァルド。


「厄介すぎる」 「最悪のタイミングだ」


誰に向けるでもない独り言。


部屋の空気が、一段階重くなった。


「今回の件は、ギルド主導で動く」 「もう単独行動は許可しない」


ウルガは小さく頷く。


「……はい」


バステト様は、尻尾をゆらりと揺らしながら、特に口を挟まなかった。


それが、かえって不気味だった。


ギルドを出る頃には、空が白み始めていた。


長く、濃密で、神経をすり減らす一日。


ようやく終わりを告げる。


ウルガは空を見上げ、小さく息を吐いた。

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