サイトK事案報告書 SCP-K003-KAC

■報告者:特別収容サイトK所属研究員 古博かん

■オブジェクトクラス:★☆☆ Safe(確保収容済)

■特別収容プロトコル:

 SCP-K003-KAC および SCP-K003-KAC-A は、現在、日本国■■県■■市■■町■丁目■の■■番地に所在する単身者向け賃貸物件■■アパート202号室を臨時の特別収容サイトK飛地として、SCP財団日本支部における外郭団体の一つであるカント計数研究会管轄かんかつの元、確保、収容済みであり、以後はサイトK事案として経過観察を続けることが決定している。


 経過観察については、SCP-K003-KAC および SCP-K003-KAC-A 内部にカント計数機を設置、同内部における現実子げんじつし変動値(以下、ヒューム値と記載)を24時間体制で計測、発生する非現実的異常性のデータを収集、解析すること。

 SCP-K003-KAC および SCP-K003-KAC-A いずれか、あるいは双方にヒューム値変動による現実改変の兆候が現れた際は、速やかにスクラントン現実錨げんじつびょう(以下、SRAと記載)を起動し、現実改変に伴う非現実的異常性の活性化を抑止すること。


 また、非現実的異常性の発生条件、頻度、他の非現実的異常性に対する影響の規模を検証するにあたり、実験内容については、事前にサイトK管理官の承認を得ること。尚、実験によって得られた結果は、SCP財団日本支部と共有するものと定める。


 SCP-K003-KAC および SCP-K003-KAC-A との接触については、サイトK管理官の承認を得た非現実性無効化体質を確認されている職員あるいは、携帯型SRAを着用した職員に限り許可される。


■説明:

 SCP-K003-KAC は、日本国■■県■■市■■町■丁目■の■■番地に所在する単身者向け賃貸物件■■アパート202号室内部で不定期に発生する低現実性の兆候を示す40平米余りの1LDK空間である。

 物件の所有者および近隣住民の証言から、少なくとも過去数年にさかのぼり、契約期間満了を待たず入居者が心理的瑕疵かしを訴え、短期間で入退去を繰り返していたことが判明している。


 現在の入居者(以下、SCP-K003-KAC-A と記載)が、2025年12月■日起床後、同空間内において、空間認知における非現実的異常性を発現し、玄関位置を喪失。居室内から正常に脱出を図ることが極めて困難な状況に陥り、119番通報したことで異常空間の発見に至った。

 尚、この時 SCP-K003-KAC-A が曝露ばくろした SCP-K003-KAC 空間内部に発生している非現実的異常性は、その場に踏み込んだ不特定多数の接触者に対しても、同様の異常性に曝露させる性質を有している。


 2025年12月■日13時30分過ぎ、SCP-K003-KAC-A から119番通報にて「家から出られない。助けてほしい」という趣旨の要請があり、救急隊が現場である SCP-K003-KAC に急行、屋外から扉をノック、呼びかけを行うものの、「家から出られない。助けてほしい」という趣旨の発言のみを繰り返して一向に屋内から出てこないため、口頭での同意を得て扉を開錠、救急隊員が SCP-K003-KAC 内部へ踏み込んだところ、SCP-K003-KAC-A はリビング内を徘徊していた。


 救急隊員が無事を確認し、SCP-K003-KAC-A を屋外へ誘導しようと試みたが、SCP-K003-KAC-A はリビングを出て廊下に隣接している洋室へと入ると、再びリビング内の徘徊を繰り返すため、SCP-K003-KAC から自力での脱出が困難な状況であることが確認された。

 その際、SCP-K003-KAC-A は「玄関の位置が分からない。家から出られない」と発言し、リビングから玄関までの数メートルの距離を正常に認知していない可能性が示唆しさされた。

 その行動の異常性から、脳梗塞等の疾患が疑われ、救急隊員の介助の元、屋外に待機していた救急車へ誘導しようと試みたものの、接していた救急隊員にも次々と異常性の曝露が確認され、その場の全員が40平米余りの居住空間から脱出が不可能となる事態に陥った。


 現場の救急隊員より、対処不能の超常現象に見舞われた趣旨の説明と共に追加の応援要請を受けて、消防組織内および関連する行政機関に潜入させているSCP財団職員が事態の異常性を捕捉、財団日本支部への本件の通報と SCP-K003-KAC および SCP-K003-KAC-A の実態調査と収容を要請するに至る。


 収容対象が、ある種の現実改変能力を有すると疑われる状況から、非現実性アノマリー現場対策に特化したカント計数研究会に出動が要請された。


 カント計数研究会に所属する非現実性無効化体質を確認されているエージェントを現場に急行させたところ、更なる曝露や戦闘に発展することなく、SCP-K003-KAC 空間内部でのヒューム値の計測と低下を確認、SCP-K003-KAC-A および巻き込まれた救急隊員らを収容、そのままSCP財団日本支部直轄の■■救急病院へと搬送している。

 周辺地域一帯については、後から合流した財団日本支部直轄の事後処理班が引き継ぎ、近隣住民への軽い聞き取り調査ののち、クラスA記憶処理を施し事案の隠滅を図っている。


 ■■病院での精密検査の結果、SCP-K003-KAC-A および巻き込まれた一般人いずれにも、脳や心身に機能的に特筆すべき異常性は認められていない。医師との意思疎通も正常に行えていたため日帰り入院で問題ないと判断され、巻き込まれた救急隊員らには簡易のクラスA記憶処理を行い解放した。

 尚、SCP-K003-KAC-A のみ記憶処理の効果が著しく損なわれていたことに留意する必要がある。

 また、SCP-K003-KAC-A は病室を出て程なく、救急外来出入り口ではなく、未案内の実験棟へと続くフロアへの侵入と徘徊の兆候を示し、エージェントに確保された。

 のちに行われたインタビューでは、「わざとではない。体が勝手に空間の奥の方へ引っ張られるように動いた」という趣旨の回答をしている。この時、SCP-K003-KAC-A が徘徊した周囲のヒューム値は、いずれも軽微ながら1を下回っていたことが確認されている。


 以上の経緯から SCP-K003-KAC および SCP-K003-KAC-A は、そのままカント計数研究会の管理下にて、確保、収容し、有している非現実性の解析を進める予定である。

 また、その経過観察の結果と今後における考察は、事案 SCP-K003-KAC としてサイト管理官を通しSCP財団日本支部理事と共有する。


 SCP-K003-KAC-A に対するインタビュー記録およびサイト内での経過観察ログについては、後述の補遺ほいを参照のこと。


 尚、事案 SCP-K003-KAC 収容活動時の音声および映像記録は、次のとおりである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る