第7話 隠すべき才能

視点:アルマティアス


正直に言えば——驚いた。

白い肌に金髪、澄んだ緑の目をした小柄な男の子、マイトラクス。


人族としては、どこにでもいそうな子供だ。


……ただし、魔法に関しては例外だけど。


基本を教えただけで、異様なほどの集中力を発揮する。


今もそう。私が頭の上に乗っているというのに、全く気づいていない。


ペシペシ。


尻尾で頬を叩くと、ようやくビクリと肩を跳ねさせた。


「なんだよ! ビックリするじゃないか!」

ふふ、やっぱりこの反応。


「集中力訓練よ。これくらいで乱されてどうするの?」

そう言ってはみるけれど、正直なところ暇つぶしも兼ねている。


驚いた顔が、少し可愛いのよね。


……念のため言っておくけど、私は魔族よ?

召喚獣の姿をしているからって、ナメられるわけにはいかない。


とはいえ、毎日同じように驚くマイトを見るたび、

口元が緩んでしまうのは否定できないけど。


魔法の上達速度は、異常だった。


四属性を扱える時点で普通ではない。


それなのに、初級魔法は一ヶ月も経たずに完全習得。


今では中級、上級の練習に移っている。


……問題は、私自身が使えない魔法まで理解していること。

イメージ構築の精度が高すぎる。


魔法は想像力がすべてなのに、まるで“見たことがある”ように再現する。


「ねぇ、アルマ」

ある日、マイトが何気なく聞いてきた。


「どうして君は、自分が使えない魔法まで知ってるの?」

……鋭いわね。


「見たことがあるからよ」

それだけ答えると、マイトはそれ以上追及しなかった。


察する力まで、子供の域を超えている。


それから半年。


「一度、思いきり魔法を使ってみたい」

そう言われ、村から離れた山まで来た。


ここなら、多少派手にやっても問題ない。

「いいわ。あの岩山に向かってやってみなさい」


……え?

氷の剣舞?

そんな魔法、私ですら完全には扱えないのだけど。


岩山を粉砕して喜ぶマイトを見ながら、内心ため息が出た。


規格外。

完全に、規格外。


喜ぶ姿は年相応なのに、やっていることが危険すぎる。

「マイト、この力は……隠しなさい」

そう忠告すると、彼は急に疲れた顔をした。


……いえ、正直に言えば、私の方が疲れたわ。


その時。

森の方から、悲鳴が聞こえた。


「妹の声だ!」

マイトは叫び、走り出す。


気配を探る。


人族が二人……そして獣が三体。


——違う。魔獣。


嫌な予感が、確信に変わった。

森の奥では、怪我をした父親が魔獣三体と対峙していた。

その背後に、倒れている小さな少女。


……命に別状はないけれど、時間はない。


震えながらも、マイトは戦闘態勢に入った。

集中力訓練が、ここで活きている。


私も一体を引き受ける。

「光魔法・上級羽衣

光の障壁を纏い、魔獣に突撃。


さらに——

「光魔法・上級光槍

眩い槍が、魔獣を貫いた。


マイトも上級・中級魔法を駆使し、残りを倒す。


そして——妹の元へ。

泣きそうな顔で、助けを求めてくる。

……やっぱりね。


「マイト、あなたがやりなさい」

光魔法。

回復。

この子なら、使える。


私は背中にごく僅かな回復魔法を流し、イメージを補助する。


——暖かい光。

「光魔法……回復」


成功。


目を覚ました妹を抱きしめ、泣き崩れるマイト。


私は、その姿を静かに見つめながら、心の中で呟いた。


…流石……ね。

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最強の召喚術師は魔族と契約していることを誰にも言えない 輪和(りんわ) @rinkazu523

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