さいごは
「…幸せだった」
「…私も、幸せだったよ」
彼女のそんな声が、この白銀の世界にぽつりと落ちて。
それがなんだか寂しくて私も同じように思っていると言葉を返した。
18歳。
きっと世間一般からしたらまだまだこれから楽しいこともいっぱいある、なんて言われるそんな年齢。
それでも私たちは、幸せなまま死にたいと、この道を選んだ。
…きっと彼女は私を巻き込んでしまったなんて考えてると思う。
そんなことを思っていれば、彼女が少し笑ったのがわかった。
寒くてもう体がうまく動かない中、彼女の方を見れば、視線を感じたのか彼女も私を見た。
「…後悔、してない…?」
「…するわけないでしょ…むしろふたりでよかった」
馬鹿だねあんたなんて思いながら。
案の定そんなことを言い出す彼女に笑って見せた。
置いていかれなくて、良かった。
何も言わずに置いていかれていたらそれこそ生きていられなかったよ私は。
繋いだ手にぎゅっと力が込められた。
「きのうのほしぞら、きれいだったね」
「ごはんも、いろいろ、おいしかったね」
うまく動かない口で拙い言葉をぽつりと呟けば、彼女も同じように返してきた。
そしてまた沈黙。
「こわい…?」
それを破ったのは彼女で。
まだ私の様子を伺うような彼女の言葉を鼻で笑ってやる。
「…ばーか、ふたりいっしょなら、こわくない」
最初に死にたいなんて言ってきたのはそっちなのに、なんで今更そんなことを言ってくるんだ、ほんとばか。
そんなことを思いながら、だんだん開けなくなる目。
言葉ももう出せなくなって。
あー死ぬんだななんて、こんな死ぬギリギリになっても吞気な考えが浮かんだ。
「…も、う…」
彼女が小さく呟く声が聞こえた。
もう、に続く言葉は、私が聞き取れなかったのか、彼女が出せなかったのか。
何を言いたかったのかなと考えながら、聞き返すことはできなかった。
「あ、りが、とう…」
その時、震えて、小さいけど、彼女の声が聞こえた。
右目からすーっと涙が零れたような気がした。
こちらこそありがとう。
つまらなかった人生が彼女に会えて、生まれ変わったように楽しくなった。
来世でもまた一緒に過ごせたらいいななんて。
ぼんやりとそう思ったのが最後だった。
死にたがりの私は 瀬戸千衣 @Setoti-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます