死にたがりの私は

瀬戸千衣

しあわせ

私たちが寝転がって見上げるのは、一面の鉛色の空。


私たちが感じているのは、もうお互いの体温だけ。


彼女と繋ぐ右手の温もりだけが、最後の感覚だった。


視界の端には真っ白の雪が見える。



「…幸せだった」


「…私も、幸せだったよ」



寒すぎて、口がうまく動かないそんな中でもそう言いたかった。



私の人生はどうだったろう。


少し複雑な家庭環境ではあったかもしれないけど、きっともっと辛い思いをしている子なんて山ほどいる、そんな人生。


ただ物心ついた時から希死念慮は消えなくて、消えてくれなくて。


彼女を巻き込んでそれを実行した私は、彼女の家族からしたら悪魔だろう。



今思えば、いろいろな幸せな場面があったなと思う。


脳裏に浮かぶいろんな場面を思い返しながら、これが走馬灯なのかなと小さく笑えば、視線を感じた。


ゆっくりと彼女の方を見れば、彼女も少しだけ笑っていた。



「…後悔、してない…?」


「…するわけないでしょ…むしろふたりでよかった」



馬鹿だねあんたとでもいうように彼女はチャームポイントでもある大きな目を細めて笑った。


初めて喧嘩をして、初めて「ずっと死にたいんだ」「消えたいんだ」と言った私を馬鹿にするわけでもなく、肯定してここまで来てくれた彼女は、本当にそれを実行した今でも一緒にいてくれることがどこまでも奇跡のような出来事なのだと思う。


彼女に会えて本当に良かった。


繋いだ手にぎゅっと力を込めた。



「きのうのほしぞら、きれいだったね」


「ごはんも、いろいろ、おいしかったね」



ぽつり、ぽつりとどちらからともなく話をして。



「こわい…?」


「…ばーか、ふたりいっしょなら、こわくない」



睡眠薬たくさん飲んだのに意外に眠れないんだねなんて笑っていた。



そうしてどれくらいの時間が経ったのだろう。


時間感覚なんて、全身の感覚がなくなっていくのと一緒に失われてしまったようだった。



「…も、う…」



眠っちゃいそう、と続くはずだった声は出なくて。


でも、もう彼女からの反応は無かった。


私も、目を開ける元気はなかった。


最後に浮かぶのは、雪に埋もれて小さく微笑む彼女。


そんな彼女にどうしても伝えたいことがあって、ありったけの気力を振り絞って口を開く。



「あ、りが、とう…」



こんな私といてくれて。


こんな私に付き合ってくれて。




もし来世があって。


もし来世も生きて行かなきゃいけないなら。


彼女とまた会えますようにと祈って。




私はなんて欲張りなんだろうとぼんやり考える。


生きていたくないのに、消えたいのに、死にたいのに。


来世のことを考えるなんてほんと矛盾してて、自分勝手で、生きていると思った。




だんだんと思考が鈍くなっていく。


だんだん、だんだんと。


だんだんと。




あぁしあわせだった。もう、なにもかんがえられない。





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