エピローグ「春の訪れと新たな挑戦」
長く厳しい冬が終わり、ミストラル村に、ようやく春が訪れた。
雪解け水が小川となってキラキラと流れ、地面からは緑の新しい芽が顔を出す。
村の木々も一斉に芽吹き、世界が色鮮やかに生まれ変わっていくようだった。
村は、かつてないほどの活気に満ちていた。
王家の直轄地になったことで、街道の整備が進み、多くの行商人や旅人が訪れるようになったのだ。
ミストラル村はもう、雪に閉ざされた辺境の村ではない。僕の料理が生んだ特産品を求めて、たくさんの人がやってくる、賑やかな交流の拠点へと変わりつつあった。
村人たちの暮らしも、劇的に豊かになった。
新しい家が建ち、畑が拓かれ、子供たちの笑い声が、村のどこにいても聞こえてくる。
あの絶望的な食卓を囲んでいた冬の日々が、遠い昔のことのようだ。
僕は、村の小高い丘の上から、そんな生まれ変わった村の姿を眺めていた。
僕の隣には、いつものようにリアナがいる。
春の柔らかな日差しを浴びて、彼女のもふもふの耳と尻尾が、気持ちよさそうに揺れていた。
「すごいね、カナタ。村が、キラキラしてる」
「うん。みんなが頑張ったからだよ」
「カナタが来てくれたからだよ」
リアナは、そう言って、にこりと笑った。
その笑顔は、春の太陽みたいに、眩しくて、温かい。
王都の宮廷料理長とのやり取りも、順調に進んでいる。
僕が考案した保存食のレシピは、王国中に広められ、多くの人々の食生活を支えているという。
時々、王都から届けられる感謝の手紙と、珍しい食材の数々。それが、僕の新たな創作意欲をかき立てていた。
「ねえ、カナタ」
リアナが、僕の袖をくいっと引っ張る。
「次は何を作るの?私、カナタの新しい料理、すっごく楽しみだな!」
その期待に満ちた瞳に、僕は笑って答えた。
「そうだなぁ……。春になったからね。山菜の天ぷらとか、タケノコご飯とか、作りたいものがたくさんありすぎて困っちゃうよ」
「てんぷら?たけのこごはん?」
聞いたことのない料理の名前に、リアナの目がきらきらと輝く。
その反応を見るのが、僕は大好きだった。
僕の料理の旅は、まだ始まったばかりだ。
この世界には、僕がまだ知らない食材が、きっとたくさん眠っている。
それを見つけ出し、最高の料理に仕立て上げ、僕の大切な人たちを笑顔にする。
それが、料理人として転生した僕の、新しい人生。
最高の仲間たちと共に歩む、美味しくて、温かい道。
「よし、行こうか、リアナ!まずは、山菜採りからだ!」
「うん!」
僕たちは、春の光が満ちる丘を、一緒に駆け下りた。
未来へと続く、希望に満ちた道を。
これからもずっと、この温かい場所で、僕の物語は続いていく。
異世界おせちの革命〜地味スキル『調理魔法』で、貧乏な辺境の村を美食の都に変えてみせます〜 藤宮かすみ @hujimiya_kasumi
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