第5話 とある少女のひとりごと
一人の少女は悩んでいた。実の兄に本物の恋をしてしまったから。
「なんでお兄のこと、好きになっちゃったんだろう……」
赤月黒也。それがこの少女――赤月黒子の想い人の名前である。
「なんかもう、隠し通すの無理かも……」
逃げるように家を出た少女は公園のベンチに腰掛け、「はあ……」と深い溜息をひとつついた。しかし、溜息をつくたびに自分の恋心が膨らんでいく、そんな感覚を覚えた。
「あの二人みたいに、私も血が繋がってなかったらなあ」
あの二人――双葉緑と双葉桃の顔を思い浮かべ、またひとつ溜息をつく。どうしようもない問題であることを理解しようと。だけど、その問題が消えることがないことも理解しながら。
悔しく思い、悲しくも思い、羨ましくも思う。だけど、不思議と憎む気にはなれなかった。自分の恋敵であるにも関わらず。
「ずっと片思い、かあ」
誰に言うでもなく、そう、一人ごちる。兄と共に過ごした子供時代のことを思い返しながら。
そして――
「私も、勇気を出さなきゃ」
自身にある種の決意を固め、無理やり言い聞かせるように呟いてから、少女は腰を上げて、両手を胸に当てながら力強く「よしっ!」と気合を入れた。
小さな勇気をかき集め、決意を新たにして。
『第5話 とある少女のひとりごと』
終わり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます