窓辺のひまわりと三人の四季
夏目よる (夜)
第1話 忘れられた窓辺と三人の出会い
四月の風が桜の花びらを卷き上げ、私立星見高校の廊下に降り積もる。高一(2)組の窓際最後の列には、常に埃が積もる窓台がある。教學棟裏の雑貨置き場に面しているため、誰も気に留めない場所だったが、転校生の浅野柚希がここにやって来て、沈黙が破られた。
柚希は高く積んだ教科書を抱え、空いた席に座ると、指先が窓台の薄い埃に触れた。カバンから清潔な雑巾を取り出し、丁寧に台を拭き終えた瞬間、背後に人に肘を突いてしまった。怀中のひまわりの苗がグラつき、落ちそうになった。柚希が慌てて支えると、眼前には清亮な瞳が映った。
「鈴木陽太だ!」男子は色褪せた制服の袖口を肘まで捲り上げ、手には園芸用の小さなスコップを握りしめ、笑顔は窓外の桜よりも明るかった。「隣のクラスの者で、この辺で植物の世話をしてるんだ。転校してきた浅野さんだね?」
柚希は頷き、話しかけようとすると、背後に本を置く音がした。黒縁のメガネを掛けた女子が厚い参考書を抱えて立っている——学年一位を独占する緒方理奈だ。
「この窓辺は風が強くて、物を置くと落ちやすい。」理奈は本を置き、柚希の手元のひまわりの苗を指差す。「雑貨置き場の水道管は漏水することもあるから、苗を置くのには適さない。」
柚希は苗を抱えてがっかりすると、陽太がスコップを振り上げた。「俺に任せろ!雑貨置き場の裏に日当たりのいい空地がある、そこに植えれば絶対に育つ!」
理奈は陽太の手元を見て、黙ってカバンから防水布を取り出した。「草木灰と緩効性肥料の混合物だ、土壌を改良できる。」
その昼休み、三人は教學棟裏の小さな空地に蹲り、手分けしてひまわりの苗を植えた。陽太が穴を掘って土を耕し、理奈が肥料の割合を調整し、柚希がそっと苗を土に埋め込んだ。風が樟の木々を掠め、桜の花びらが三人の髪に舞い落ちる。言葉は少なかったが、不思議な默契が流れていた。苗が土に根を下ろした瞬間、三人は同時に笑顔を浮かべた。春の陽射しの下、運命の糸が三人を縛りつけ始めた。
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