鑑定スキルが「古物商」だったので、追放された先の魔王領で人間界のゴミを伝説の武器として売り捌く
たらこの子
第1話その『ゴミ』、俺にとっては国宝級につき
「ルト、悪いが君はクビだ。……いや、このパーティーから『追放』させてもらう」
眩いばかりの白銀の鎧に身を包んだ聖勇者・レオンは、心底見下したような目で俺を突き放した。
ここは王都のギルド「黄金の翼」の個室。ついさっきまで、俺たちは魔王軍との決戦に備える人類の希望だったはずだ。
「……理由は、やっぱり俺のスキルか?」
「察しが良くて助かるよ、ルト・フィアット。君の【古物商(アンティーク・ディーラー)】……鑑定しても『二束三文』だの『保存状態:悪』だの、戦いには一ミリも役に立たない。僕たちが欲しいのは、敵の弱点を見抜く『真理の眼』であって、ガラクタの査定士じゃないんだ」
パーティーの聖女も、魔導師の女も、憐れみの目を向けながらも否定はしなかった。
この世界において、スキルは絶対だ。
俺の【古物商】は、物の価値を見抜き、修理し、流通させることに特化した「生活系スキル」。戦場という極限状態では、無能の代名詞とされていた。
「これまでの功績を免じて、この『ガラクタ袋』は君にやろう。魔王領の境界付近まで送ってやるから、そこで野垂れ死ぬか、細々とリサイクルショップでも開くんだな」
レオンが足元に投げ捨てたのは、道中のダンジョンで拾い、使い道がないと判断されて「破棄予定」だったマジックアイテムの残骸たち。
俺はそれを黙って拾い上げた。
その瞬間、視界に【古物商】独自のシステムメッセージが走る。
『鑑定対象:破損した真鍮のベル』
『真価:聖域の警笛(あらゆる高位魔族の接近を検知し、自動で防壁を展開する)』
『状態:最悪(※ただし、現代の「接点復活剤」の概念を応用すれば10秒で修復可能)』
『市場価値:時価(推定、王城ひとつ分)』
……やっぱりだ。
この世界の連中は、スキルの使い方が致命的に下手すぎる。
「鑑定」して「価値がない」と出たら、そこですべてを投げ出す。だが、俺のスキルは違う。「どう直せば、いくらになるか」まで、俺の知識と連動して導き出してくれる。
「……わかった。この『ゴミ』は俺が引き取るよ。その代わり、後で返せって言っても絶対に返さないからな」
「ははっ! 誰がそんなゴミを欲しがるかよ。さっさと行け、無能!」
俺は転送魔法陣に押し込まれ、人間界の最果て――魔族が支配する「不毛の地」へと飛ばされた。
――1分後。
俺は、どす黒い霧が立ち込める魔王領の森に立っていた。
普通なら、レベル1の人間が放り出されれば数分で魔物に食われる絶望的な場所だ。
「さて……まずは『護身用』を用意するか」
俺は袋から、レオンが「錆びすぎてナマクラだ」と捨てた一本の短いナイフを取り出した。
『鑑定対象:錆びついた儀礼用短剣』
『真価:神殺しの牙(物理・魔法耐性を100%貫通する)』
『修復:表面の酸化膜を除去し、魂の研磨を行うことで真価を発揮』
俺はスキル【修復の指先】を発動させる。
前世で培った「古びたものを輝かせる」技術が、魔力となってナイフを包み込む。
シュンッ、と心地よい音が響き、錆が剥がれ落ちた。
現れたのは、星空を溶かし込んだような漆黒の刃。
「グガアアアアッ!」
背後から、ランクAの魔物「ブラッド・ウルフ」が襲いかかってくる。
俺は振り返りざま、適当にそのナイフを振った。
手応えはない。
だが、次の瞬間、巨大な狼の体は豆腐のように真っ二つに裂け、霧となって消えた。
「……よし。やっぱり俺の鑑定は間違ってない」
俺は足元に転がっている、さらなる「ゴミ(神話級アイテム)」たちを見つめて不敵に笑った。
勇者たちよ、覚えておけ。
お前たちが捨てたゴミで、俺はこの魔王領に最高の「店」を作ってみせる。
そして数ヶ月後、最強の武具を求めて泣きついてきても……「あいにく、お前らに売るゴミは一点もねえよ」と笑ってやるつもりだ。
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