第4話
男は車を走らせていた。
黒い普通車だ。
県道を走っていた。
――うん?
道に何かいる。人形か。
その小さな人形は道の真ん中に立っていて、まるでこちらを見ているかのような体勢だった。
男が人形を避けようかどうしようかと考えながら車を走らせていると、その人形が男の車に向かって走り出した。
――ええっ?
人形は激しい速さで車のボンネットに飛び乗った。
それはただの人形ではなかった。
身体よりも頭のほうが大きく見えた。
ミニのワンピースから出た手足には、膝などのジョイント部分がはっきりと見える。
そしてなにより、小さな体の上に載っている大きな顔は、人形のそれではなく、生きている人間、リアルな幼い少女の顔そのものだったのだ。
男があっけにとられていると、人形は一瞬にしてフロントガラスを割って車内に突っ込んできて、男に抱き着いた。
事故だ。
事故自体はこの地方都市でもそう珍しいことではない。
県道で黒い車による自損事故だ。
ただ事故を担当したベテランの警察官はいろいろと違和感を覚えた。
運転手の首が折れている。
事故で運転手の首が折れることは、少ないがないわけではない。
しかしこの角度で車が電柱に突っ込んで、こんな風に折れてしまうものなのか。
それとフロントガラスの割れ方だ。
電柱に突っ込んでいるので割れて当然なのだが、どうもおかしい。
電柱で割れる前に、何かがフロントガラスに突っ込んだような形跡が、わずかながら見受けられるのだ。
引っかかるものはあったが、それは伏せて報告書を書いた。
細かく調べるのは面倒だと思ったからだ。
だからただの自損事故とした。
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