最強暗殺者はすぐ死にます~異世界転生で余命44日の俺。生き残るため、美少女たちの依頼を受けてみた~

流石谷 ユウ

第1話 最強暗殺者、死す/見知らぬ城内

「諦めろ。お前の部下は全て殺した」


 ここは日本。闇夜が支配する路地裏。俺は一人の男を追い詰めていた。


「流石は最強と呼ばれる暗殺者。隻眼(せきがん)のタナトス」


 男は俺のコードネームを呟く。そのままゆっくりと両手を挙げた。


「ワタクシ、掌(てのひら)のレオがピンチでございますか」


 こいつは依頼のターゲット。暗殺者レオ。俺の同業者だ。ここまで軽い交戦を交え、現在に至る。


「ピンチ? 違うな」


 片手に持っていたナイフを、レオの喉元に。


「ピンチにはチャンスがある。だが、ここにそんな物はない」 


「ほお」


「お前は終わりだ」


 奴の部下は一人残らず片付けた。邪魔が入ることはない。更に、レオは手負いの状態。立つのがやっとのはず。抵抗しても、動作は限られる。


「いえいえ。ここからが本番でございますよ?」


 ニヤリと笑うレオ。瞳の奥には、どす黒い何かが蠢いている。強がりだ。勝ち目などない。仮にそんなものがあるとすれば、それは奇跡だろう。


「その笑み、勝ちを確信しておりますね?」


 レオは震えながら手を伸ばしてくる。

 

「ワタクシは掌のレオ。あなた様は、ワタクシの策にはまったのでございますよ」


「もういい。死ね」


 俺はナイフに力を込める。


「はい。といっても」


「!」


 突如、眼前から光。それはレオの手から放たれていた。


「死ぬのはあなた様でございますが」

 

「!」


 場の空気が変わる。先ほどまで肌で感じていた閉塞感がない。どういうことだ? この解放感。狭い路地裏ではあり得ない。


「!」


 あるものが目に入る。それは、長い棒と三色で構成された物体。信号機だ。


「なぜ信号がここに?」


「あなた様とワタクシは、瞬間移動したのでございます」


「は?」


「ここは道路の真ん中、といえばお分かりでしょうか?」


「道路だと?」


「はい。そして、あなた様は動くことができないまま死ぬ」


「何を言って」


 ドン!


 側面から何かが衝突してきた。固く重厚感のある物体。トラックだ。銀に彩られたその凶器が、俺を突き飛ばしたのだ。存在は認識していた。すぐに避けようと思考は巡らせたつもり。だが、出来なかった。なぜなら俺の体は、見えない何かに動きを制限されていた。


「るお」

 

 衝突を避けられなかった俺は、端に突き飛ばされる。


「ふ、ふははは!」


 レオが笑い声と共に近寄ってくる。


「哀れですねえ! まさか、最強と呼ばれたあなた様が瀕死とは」


「……」


「おや? まだ息があるみたいでございますね?」


 俺の髪を持ち上げるレオ。奴の薄汚い笑みがこびりついてくる。


「良いでしょう! このままトラックで死なれては、傍観者として興ざめ! ワタクシ直々にとどめを」


「お前じゃできねえよ……」


「は? 何を言って」


「もうナイフで切ったから……」


「は? があ!?」


 レオの体から血飛沫。それは止まることなく溢れ出す。


「い、いつの間に!?」


「さあ……。そんなことにも気づかないなんて、暗殺者失格だろ……」


「お、おのれタナトスゥゥゥ! この痛み! 必ずその身に返してやごほっげ!?」


 どさりと倒れるレオ。あれだけの血を流したんだ。出血多量で死んだのだろう。


「依頼は果たしたな……。ごほっ」


 意識が薄れる。体の力という力が抜けていく。手足は痺れ、身動きが取れない。限界だ。至近距離から車にぶつかったんだ。無事で済むわけがない。


「道の端で死ぬなんざ、なんつー最後な……んだ……」

 

 夜風が冷たい道路にて。俺の人生は幕を降ろした。


 ◇


「ん、ん?」


 光が見えてきた。ここはあの世って奴か。どうやら人殺しの暗殺者でも、そこへ行く権利はあるみたいだ。ゆっくりと目蓋を開いてみる。さて、あの世とやらはどんなところか。この目で見てやるとするか。


「な、なんだ貴様は! どこから現れた!」


「は?」


 俺の目に映ったもの。それは見知らぬ城内だった。

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