第33話

📘 第33章:解かれた鎖 新たな鎖



(救い出す。それだけが、今の私の存在理由――。)



2050年、RE:CODE関連医療施設。


夜明け前の薄暗い廊下を、重装備の武装班が静かに進んでいた。


先頭には真田。その背後で、佳乃が端末を操作していた。


「ロック解除……完了。」


カチ、と電子錠が外れる音。


真田が手信号を出すと、班員二人がドアを開け突入した。



小さな無菌室。


震える少女がベッドの端で膝を抱えていた。


銀色の点滴スタンドが、冷たい蛍光灯に鈍く光る。


「大丈夫だ……君はもう自由だ。」


真田が柔らかい声で告げる。


少女は怯えた目で見上げた。


その名は――楓莉(ふうり)。


ミカゲが教えてくれていた。



🔷 【NOISE仮拠点 – 検査室】


「……異常なし。どこも悪くない。」


甲斐がカルテを閉じ、深い息を吐いた。


「長期拘束によるPTSD傾向はあるが……治療と家族の存在があれば、十分回復可能だ。」



佳乃は通信端末を立ち上げ、RE:CODEへの逆向きチャネルを開いた。


──画面の向こう。

暗いオフィスで、褐色の長髪を一つに結んだ人物がモニターを見つめている。


ミカゲ ハヤト。



「……お前か。」


掠れた声。


「……あんたの妹、どこも悪くないって、無事だったよ。」


佳乃が低く告げる。


画面越しのミカゲは、ゆっくりと目を閉じた。


「……そうか。良かった。」


短く呟く。その瞳に、初めて涙が滲んでいた。



🔷 【RE:CODE統合管理局 – 榊原オフィス】


「安心しろ。」


榊原廉也は、モニタリング映像の佳乃を見つめながら言った。


「彼はこれからも君のライバルだ。ただ……君のことはもう忘れるがな。」


オフィス奥、暗い部屋で。

ミカゲは無表情のままコードを打ち続けている。


(妹さえ守れればいい……記憶なんて……いらない。)


しかし、震える唇がわずかに動いた。


(……ごめんな、gyudon……)



🔷 【NOISE仮拠点 – 会議室】


佳乃はファイル最終解析を走らせていた。


無数の暗号ファイルが次々と解凍されていく。


《黒峰新太:第1号被験者 / 改訂前名 不破翔真》


画面に浮かぶファイル署名。


そして、さらに一つのファイルが開かれる。


《黒峰沙耶:第2号適応被験者 / 改訂前名 結城望》


(結城……望……?)


佳乃は息を呑んだ。


(……あんた……結城維人の……妻?)


ファイルには、結城望が改訂され、黒峰新太の“妻役”に配属された詳細経緯が記録されていた。


(……こんな……こんなことが許されるわけない……!)


佳乃の拳が震えた。



画面上には、


《役割:父性安定化プログラム / ECHO監視抑制者》


という無機質な文字列が光っていた。



佳乃は深く息を吐き、インカムを装着した。


「透也。」


『……どうした?』


「全部、揃いました。」



(助けるから……月陽も、灯も、ミカゲも……誰も置いていかない。)



🔚 第33章・完

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