第9話

📘 第9章:雑音の中の光



🔷 【時期】

• 2039年

• 光生:27歳(NOISE理念象徴・看護師)


🔷 ① 導入 – NOISE活動日常(ルカ登場)


NOISE医療室。


簡易ベッドに横たわる少女が、薄く目を開けた。

濃紺の髪、白いパーカー。瞳は幼いが、その奥に光はない。


「大丈夫よ。怖いことは何もないから。」


光生が優しく髪を撫でると、少女――ルカの小さな身体が震えた。


(この子も…奪われかけたんだ。)


背後で透也が腕を組み、静かに見守る。


「無理はするな、光生。」


「分かってる。でも…放っておけないから。」



🔷 ② 灯の視点 – 憧れと覚悟(職場)


夕刻。民間診療所の看護師控室。

包帯の準備をしていた灯は、鏡越しに光生の姿を盗み見ていた。


(光生さんは、いつも完璧だ…

あんなふうに、人の心に触れられるなんて、私には…)


「どうしたの、灯ちゃん?」


光生が背後から声をかける。

驚いて振り返った灯は、俯きながら呟いた。


「……いえ、私なんて…光生さんみたいに完璧にはなれないなって。」


光生は小さく笑い、灯の頭を撫でた。


「完璧な人なんて、どこにもいないわよ。

私だって、弱いところばっかり。」


灯は涙をこらえ、微笑み返した。



🔷 ③ 翔真との邂逅


診察室。

古びたカーテンの向こうに、男が座っていた。


黒髪短髪、浅黒い肌。

筋肉質の腕には、殴打痕と擦過傷が無数に走っている。


「不破翔真さんですね?」


光生がカルテを確認する。


「はい。」


低く掠れた声。瞳は虚空を見つめ、どこか遠い場所にあった。


「怪我の原因、教えていただけますか?」


「……白帳だからって、殴られました。」


淡々とした口調だった。


光生の手が止まる。


(…記録改訂者への暴行。

どうして、こんなことが…)


「酷いことする人がいるのね。」


「まぁ、白帳なんて生きてるのか、生かされてるのか分からないし。

でも…社会には、貢献したいとは思ってます。」


そう呟く翔真の横顔に、光生は言葉を失った。



🔷 ④ 翔真の視点 – 禁忌の感情


光生の指先が傷口を拭うたび、ひどく不快で、けれど微かな温かさが滲んだ。


(……俺みたいなものに、構うなよ。)


顔を背けたが、胸奥で何かがわずかに軋んだ。



🔷 ⑤ 灯の視点 – 不穏の予感


診療所の廊下。

灯は帰り支度を整えながら、待合スペースで会計を待つ翔真を一瞬だけ見た。


無表情、だがその瞳の奥に潜むものが、灯には理解できなかった。


(この人…何かが違う。)



🔷 ⑥ ラスト – 光生の希望


帰路。夜風が髪を揺らす。


灯と歩く光生が、ふと立ち止まり、空を仰いだ。


「…救えるのかな。こういう人も。」


夜空に瞬く星を見つめ、優しく微笑む。


「でも、救わなきゃね。」


その微笑は、誰よりも眩しく、そして儚かった。



🔚 第9章・完

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