第5話
📘 第5章:NOISE – ノイズの呼び声
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🔷 都内某所・廃ビル地下
夜の街の喧騒から遠く離れた、薄暗い廃ビル。
入り口の鉄扉は錆び、周囲は落書きとゴミで覆われている。
だが、地下階への非常階段を降りた先には、全く異なる空間が広がっていた。
無骨なLEDライトが天井に吊るされ、
コンクリート壁には無数のモニターが設置されている。
壁面には赤いスプレーで書かれていた。
「NOISE」
記憶改訂制度に反発する組織の名。
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🔷 集会
20人ほどの男女が、モニター前に集まっていた。
全員フードやマスクで顔を隠している。
年齢も服装もバラバラだが、その瞳には同じ色があった。
憤り。恐怖。復讐。
そして――“奪われたものを取り戻したい”という叫び。
“白帳(しらちょう)”――記録改訂者たちを嘲(あざけ)る俗称だった。
戸籍や犯罪歴から全てを抹消され、
新たな身分と記憶を書き込まれた“白紙の帳面”。
社会では不安と差別の対象となり、
時に人々の憎悪のはけ口となった。
一方で、
“ECHO(エコー)”――記録改訂者の中でも、消去されたはずの記憶や感情が“残響”として表出し始めた者たちを指す。
社会にとっては重大な脅威とされ、
再犯や記憶復活による制度崩壊リスクとして機密扱いされている。
しかしNOISEにとっては、
“奪われた記憶や尊厳を取り戻す希望の象徴”でもあった。
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🔷 コアメンバー紹介(最新版年齢適用)
朝比奈 透也(あさひな とうや)
43歳。NOISEリーダー。
落ち着いた黒縁眼鏡とスーツスタイルが特徴。
元々は公認心理士であり、被害者支援カウンセラーとして働いていた。
しかし、妹・光生(享年34)の殺害を“無かったこと”にされたことが、NOISE結成の決定的理由となった。
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蓮水 佳乃(はすみ よしの)
28歳。NOISEサブリーダー兼情報戦担当。
銀髪ボブと鋭い水色の瞳が印象的。
ハッキング技術に長け、政府データベース侵入を日常的にこなす。
苛烈で皮肉屋だが、仲間への思いは深い。
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真田 剛志(さなだ つよし)
42歳。NOISE警備・武装班リーダー。
元公安刑事。体格は大きく、無精髭と防弾ジャケット姿が特徴。
現実主義者で冷徹な面があるが、民間人を巻き込む作戦は絶対に拒む。
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天音 ルカ(あまね るか)
17歳。NOISE広報・SNS戦略担当。
濃紺の髪と黒マスク、白パーカーがトレードマーク。
無表情で感情が読みづらいが、過激で的確な動画編集と煽動能力を持つ。
地下配信者として数百万人規模のフォロワーを抱える。
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甲斐 仁(かい じん)
35歳。NOISE医療班リーダー。
黒髪を後ろで束ね、細身の眼鏡をかける。
元RE:CODE研究所協力医師で、人体改訂の技術と危険性を知る数少ない人物。
静かで寡黙だが、誰よりも被改訂者の身体を気遣う。
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🔷 中央デスク
甲斐が、医療棚から視線を戻すと、中央モニターに映る報道が切り替わっていた。
黒縁眼鏡の透也が、タブレットを操作しつつ無言で映像を見つめている。
『記録改訂制度により更生処理を受けた重犯罪者として初の社会復帰事例が発表されました。
政府は今後も、殺人や重大犯罪者への適用を本格化させる方針です。』
透也の瞳が微かに揺れた。
(……光生……。)
胸の奥で疼く感覚。
それは怒りでも憎悪でもなく、もっと冷たく静かなものだった。
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🔷 蓮水 佳乃
「はいはい、“初の社会復帰”ね。笑わせる。」
佳乃は画面を睨み、鼻で笑った。
「ニュースじゃ“初めて”なんて言ってるけど、
実際にはもう何千人も改訂済みで野に放たれてる。
ただ――“初めて成功した”ってことにしておかないと、市民が不安になるから、でしょ?」
彼女の瞳には、冷たい怒りと諦観が混ざっていた。
「ほんと、どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんだか。」
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🔷 真田 剛志
「愚劣でも、現実だ。」
分解した拳銃を磨きながら呟いた。
「人は自分が一番安全でいたいんだよ。
正義も倫理も、そんなもん後回しだ。」
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🔷 天音 ルカ
「透也さん、明日の配信台本上がりました。
“可愛くお願いします”ってリプが多いけど、別に可愛くなくていいよね?」
タブレットを操作しながら、無表情で言う。
「……好きにしろ。」
「了解。じゃあ、もっと怖くしておく。」
彼女の声には、相変わらず感情がなかった。
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🔷 甲斐 仁
「透也さん。
改訂者用の情動安定薬が底をつきそうです。
このままだと、保護したECHOが発作を起こしたときに抑えられません。」
「……分かった。」
甲斐は短く返答し、在庫表にチェックを入れた。
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🔷 スクリーン映像
別の映像が映し出された。
若い男が、幼い少女の手を引き歩いている。
穏やかな笑顔。
娘は嬉しそうに父の手を握っている。
『黒峰 新太(くろみね あらた)――記録改訂者。』
透也の喉奥が、微かに震えた。
(……光生……。)
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🔷 透也の宣言
透也は立ち上がり、中央スクリーンに映し出された街の夜景を見据えた。
「……世界は、ノイズを嫌う。」
静かな声が、暗い室内に落ちる。
「でも――ノイズなしに、音楽は生まれない。」
彼は振り返り、メンバーたちを見渡した。
「奪われた声を、取り戻す。」
無数のフードとマスクが、小さく頷いた。
コンクリートの冷たい壁に、その決意が反響していた。
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🔚 第5章・完
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