第18話

 魔物は倒され、出てきた石壁は全て崩れ落ちた。


「だ、大丈夫ですか、腕が...」


 しまった、最初に油断していた。正直、一発くらって試そうと体が勝手に動かなくなっていた。


 しかも、攻撃が完全にどこからくるか分からなかったのもある。まさか、ダンジョン自体が魔物の支配下なんて・・・


「大丈夫だ、心配ない」

「でも、血が・・・」

「いや、心配ない。こんな時のために、回復ポーションと包帯を持ってきたんだ」


 回復ポーションなんてものがあるのか。ラントさんはそれを一気に飲み干してしまった。


 包帯を巻き、立ち上がる。


「最後、サポートしてくれてありがとうございました。たぶん1人じゃ無理でしたね」

「・・・ああ」


 あれ、元気ない?まあ傷を負ってるし、当たり前か。


「じゃあ行きましょうか」

「・・・・・・ああ」





 ▽





 *《冒険者ギルド》*


「ど、どうしたんですか、その傷?!」


 ギルドに入ると、周りの人たちが駆け寄ってきた。ラントさんは、ここでは有名なのか?


「いや、大丈夫だ。東のダンジョンで少しやられてしまってね」

「東のダンジョン?あそこってB級ですよね、そんなところ、ラントさんなら...」

「ーーあそこはB級ではない」


 ん?誰だこのいかついおっさん、貫禄が凄いな...


「あのダンジョンからとんでもない魔力が計測された、少なくともA級以上だ。それにしても、お前がこんなになるなんて、よほど強い相手だったんだろうな」

「ギルド長、お疲れ様です。やはり、あそこはB級ではなかったんですね」

「ギルド長?!」


 思わず声が出てしまった。


「てか、あの子だれだよ」

「知らない、有名な冒険者とかじゃない?」

「バカいえ、まだ子供だぞ」

「でもラントさんの隣にいるし...」


「おう、お前がその子か。ほれ、ちょっと聞きたいことがある。奥へ来てくれ」

「は、はあ」


 何だ、聞きたいことって、俺なんかしたっけ?


 てか、歪みは見つからなかったし、早く先に行きたいんだけど.....




「そこに座れ」


 俺は机を挟んでギルド長の前に座る。


「自己紹介しよう。俺はここのギルド長、ライガだ」

「レインです。よろしくお願いします」

「レインか、お前の事は少し聞いた。3日でダンジョンを踏破したってな」


 そういえば、3日しか経ってなかったっけ。


「でも、それはラントさんのおかげで」

「ラントは腕を半分無くしているのに、お前は無傷だ」

「それはラントさんが庇ってくれたからで..」

「じゃあラントに聞いてみるか?」


 もう何も言い返せない。この人、結構勘がいいのか?


 まあこんなところで時間くっててもしょうがないし、早くもう一個のダンジョンに行きたいんだけど、、


「それに、噂だがこの前南のルイボスに、とてつもない量の魔物の魔石を持ってきたって言うガキがいたらしいが・・・お前か?」

「うーーん...」

「まあいい、話はもう一つある」


 話?まだ続くのかよ、これ。


「何でしょうか」

「俺と手合わせしないか?」


 ん?手合わせ?


「な、何で俺と手合わせなんか・・」

「俺はな、強い奴と戦いたくて冒険者になった。でもな、ここにずっといてもなかなか強い奴は来ない、最近は特に退屈な日々だ。ーーお前なら、楽しめそうだからな」


 げ、めんどくさいタイプだ...


「早く帰りたいって顔に書いてあるぞ。戦ってくれたら、すぐに解放しよう」

「じ、じゃぁまあ、、本当にすぐに帰してくれるんですよね」

「ああ、もちろん」


 なんか言いくるめられた気がしてならない...




 ▽




「えっ、何ここ」


 周りにめっちゃ子供がいる・・・ここ、一体どこだ?



「ーーおい、この子誰だよ」

「なんか先生と戦うらしいぜ」

「えぇ、それは可哀想じゃない?ボコボコにされちゃうわよ」



「ここは修練場だ。俺はここでいつもみんなに冒険者の全てを教えている。さあ、ここで勝負といこう」


 ライガは木刀を2本もち、片方を俺に投げた。・・もう逃げ場は無いみたいだな。


「はい、わかりましたよ、もう」


「おい、あの子殺されちゃうんじゃないか?!先生は誰に対しても手を抜かないので有名だったろ?」

「やべぇよ、」


 意外と狭くて、周りのヤジがよく聞こえる、、まあ、ほどほどに負けて終わるか。


「それじゃあ、2人とも構えてください」


 俺は剣を構える。


  「よおい、はじめっっ」


 その瞬間、ライガが視界から消え去った。


「えっ、早っっ!?何っ、やめてやめて」


 俺は危機感を感じ、咄嗟に剣を振り回した。ここで、傷がついて超回復を見せる訳にはいかない、、


「ババババババンッ」

「へっ?!」


 いつのまに前に来ていたんだ?全く見えなかった。動きが早すぎる・・・てか、何で俺の手はこんなに動いてるんだよ、こんな動き人体の構造上出来るはずないんだけど...


 ギルド長は止まることを知らず、次々と攻撃を仕掛けてくる。俺は防戦一方だ、このまま負けれればいいんだけど、まだ全然わからない。


 何か、体の力の半分って感じだ。多分、俺はこのスキルの本気を出せてないんだろう。いや、出せなくて万々歳なんだがなっ!


「楽しぃなあ、こんな戦いは久しぶりだよ。はははっっ」


 楽しい?疲れるだけだろ、これ。しかも、マジで手が全然つかれねぇ。・・って、なんかこの人速くなってないか?



 そう、ライガは楽しすぎて、自分のリミッターを外してしまったのだった!



 てか、速くなるにつれて俺の手も速くなってきてる。やばい、一刻も早く終わらせないと、まじでーー



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「剣技さえもこれほどまでとはっ?!・・・一体どうなっている?はっ、速すぎて見えない」


 確かに、確かに魔法はとてつもなく強かった。尋常ではなかった。


 でも、これまで、剣技だけは、先生が1番強いと信じてきた。昔から、俺の憧れだった。敵わないと思ったんだ。


 ーー先生は、俺と剣を交える時、決まって笑顔になる事はなかった。教えてる時だけだ、笑顔でいたのは。でも今の先生、、めっちゃ楽しそう。


 ただ、前にある光景が信じられない。彼は本当に何なんだ、もう。ほとんど見えない俺ですらわかる、これはーーーーーーーー先生が、押されている。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 剣の攻防が繰り広げられている。が、しかしだんだんとライガの体には限界が迫っていた。


「おい、ちょっとまてよ、先生が押されてる?!嘘だろ」



 彼は、すでに体の限界に達していた。




 やばいやばい、この人、速度が落ちたぞ。俺でもわかる。なのに、この手は変わらずだ。まずい、このままじゃ...勝っちゃう。




 ボキィィ



 ガイルさんの木刀が折れた。やっと終わった・・・てか、ーーー


「か、勝っちゃった」



「おいまじかよ、あの先生が?」

「信じられないわよ!だってあの先生よ!?」

「でも、信じるしかない。だって、こんな試合見た事がない、俺たちがどうこう言えるレベルじゃない!!」

「あの子、誰なのよ?信じられない、こんなの・・・」



 何か騒がしいな...でもとりあえず、これで終わったんだよな?


「戦いはおわりですね。僕はもう行きます。ありがとうございました」


 そう言って、俺は修練場を後にした。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「せ、先生が負けた?」

「おい、一体誰だよ、あいつ?!」



 あれ、俺は今、負けたのか?俺が?



 確かに強そうだからと戦いを挑んだのは俺だ。でも、こ、これほどまで、とは・・・


 おかしい、負け、た?俺が、か。はぁ、俺も、自惚れてたって訳か。


 ・・・でも、何でだろうな。めちゃくちゃ楽しかった!。そう思っちゃった。


「よく分かった。俺は、冒険者を辞めて、良かったのかも知れないな」


 そう言って、ライガは部屋へと戻っていった。



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英雄は終わりを求めて旅に出る 〜死を追い求めし世界最強の冒険録〜 了静 @ryosee

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