第6話

 「ーーーーーあれ、俺どうして生きて、、」


 ふと振り返ると、そこには無言で立つノアさんがいる。



「はっ、そうだ、お母さんが」



 気づくと、そこには血まみれで倒れるお母さんと、

 . . . お母さんの上に倒れ込む、お父さんの姿があった。



 「う、嘘だ。お父さんとお母さんが、こんなになる、わけ……」


 何が、起こった、?俺は、確かに刺されたはずーー


 「へっ?!」


 自分の体のどこを探しても、傷が一つも残っていない。これは、夢なのか。な、なんで・・・


「ガイル、が、あなたを助ける、為に、心臓を取りかえたの」

「な、何を言ってる」


 脳が理解するのを拒んでくる。


「それで、レイン君は助かったけど、ガイルは、もう……」


 心臓を、取りかえた?何で、そんな事したら自分が死んじゃうじゃないか。何でだよ、こんなの


 っ!俺、泣いてる、のか 。


「. . . お父さん」


 呼びかけても、もう応えてはくれない。

 レインは、家族が居なくなってしまったことを実感し、感情がせきを切って漏れ出す。



「何で、何で、何でこんなっ」



 泣いて、泣いて、涙が無くなるまで泣いた。




 ーーそして、レインは、静かに声を発した。


「心臓を、もとに戻してくれ」

「それは、、出来ない」

「何で……元通りにするだけだろっ!」

「そんな事したら、ガイルの覚悟が無駄になる」

「っっ!」


 それ以上は、何も言い返せなかった。


「ちょっと、1人にさせてくれ」


 そう言って、寝室へと入った




♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦




 どうして、俺なんかを……


 大切だったものは奪われ、ただ1人、この世界に放り出された。


 前世と同じだ。何もやる気が起きない。


 もう、死にたい。やっぱり、人生なんてろくなものじゃなかった。. . 楽しいだなんて、思わなきゃよかったんだ。


 そう思いながら、静かに眠りについた




 ▽





 次の朝、すぐに家を出ようと思った。俺にはもうここにいる意味はない。


「もう、行くのね」

「はい」

「じゃあね、レイン君」

「はい、またいつか」


 そう言って、俺は馬車に乗った。


 起きた後、ノアさんと話し合って、父の死は公表しない事になった。<英雄>の死というのは、世界に大きな混乱を招く。  


 今は大人しくしている魔王も、これを機に攻めてくるかもしれない。


 それ程に、父の存在は大きかったのだ。


 そして、俺はと言うと、家を離れ2番目に近い町へ赴く事にした。


 あいつは、また俺の事を殺しに来るかもしれないからと、ノアさんにも背中を押された。


 ノアさんは、俺が言わなくとも犯人が分かっている様子だった。


 アベルはお母さんの元彼で、別れてお父さんと結婚した事が許せなかったらしい。お父さんも薄々気づいていて、だから出来るだけ家にいたと知った。


 ノアさんはこれからも旅を続けるらしい。


「仲間がいなくなっても、やる事は変わらない」


 と、強く話していた。姿を消したアベルの事も、探してくれると言ってくれた。多分、この人は大丈夫だろう。


「さてと、、」


 これから何をして過ごそう。お父さんの資産は使えないから、自分で稼がなきゃならない。


 何も、やる気が出ない。


「ノアさんからもらった5000ティアでどこまで泊まれるのかな」


 宿なんかに泊まった事がない、てか大体の事の相場がわからない。


 この世界の事を何も知らないレインは、苦難に苛まれていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 レインを見送ったノアは、未だに迷っていた。


「あの時私がした事は、本当に間違っていなかったのかな」


 私は、あの時、一瞬だが見えてしまった。

 心臓の表面に、光っている何かを。


 あれは、きっと、聖紋…だろう。多分


 あんな所にあるとは思わなかった。


「私はもしかしたら……とんでもないものを、あの子に背負わせてしまったのかもしれない」


 あの選択に悔いはない。でも、これから、私は彼を支えていかなければならない。そう強く感じた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「・・着きましたよ、坊ちゃん」

「ん、ああ。ありがとうございました」


 出発から2時間弱、レインは剣術の町、ルイボスに到着した。


「でかいなあ」


 入り口に立つと、あらためてその大きさに驚かされる。高い塀に囲まれたこの町は、このバルサ国の中でもよく魔物の襲撃に遭うところらしい。


 中に入ると、綺麗な町並みが目に入る。日本では見たことのない物ばかりが並んでいる。


「えーと、ああ。まずは、泊まれる場所から…」


 溢れ出しそうな悲しみを抑え、一歩ずつ奥へと足を進める。


「広くて全然見つからない…」


 やっぱり、家から出た事が無かったからかな。


 そんな時、{宿屋 アラナ}という看板がふと目に入った。


「まあ、ここで良いか」


 選り好みする気力も無く、宿へと入った。


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