この世ならざる者、異世界で生きる

浅田三等兵

第1部 転生後、最初の5日間

1日目

エルフに救われる #1

──気がつくと、僕は森の中にいる。


正確には、木々が切り開かれた道の上で、うつ伏せになっている。


……僕は死んだはずだ、と思う。


最後に覚えているのは、モニターの白い光。


脳を揺さぶる激しい頭痛に襲われ、視界がぼやけ、音が遠のいていく。


抵抗する間もなくデスクに突っ伏し、そこで意識はプツリと途絶える。


そして今、僕はここにいる。


視界を埋め尽くす生い茂る木々。


鼻腔をくすぐる腐葉土と湿った土の匂い。


意識を失う前は夜だから、降り注ぐ陽の光が少し目に染みる。


身体を起こし、立ち上がる。


様々な考えが頭を駆け巡るが、答えなど見つかるはずもなく、僕はその場に立ち尽くす。


しかし、その静寂は背後から轟く一発の咆哮によって破られる。


振り返った僕の視界に映るのは、狼のような見た目の「何か」だ。


狼や犬だとしても、見たことのない異常なサイズ感。


本来なら檻の中にいるはずの猛獣を前に、即座に腰を抜かす。


狼は鋭い牙を剥き出し、緑色の瞳でこちらを睨みつけている。


低い唸り声をあげているが、もはや威嚇の必要はないと判断したのか、あっけなく飛びかかってくる。


牙が、目の前に迫る。


死を覚悟したその刹那、横から鋭い閃光が走り、狼を貫き、頭が消滅する。


首を失った巨体は跳躍の勢いを殺しきれず、僕の体へのしかかる。


おかげで僕は、熱い血を派手に浴びることになる。


あまりの出来事に呆然とする僕を、「大丈夫かい?」という凛とした声が現実へと引き戻す。


尻餅をついたまま、首だけ回して声の方を向く。


そこには、杖を握った背の高い女が立っている。


透き通るような肌、翡翠色の瞳、造形美としか言いようのない整った顔立ち。


ポニーテールにまとめた長い髪が、陽光を受けて輝いている。


外見だけで言えば、細部に至るまで隙のない魅力的な女性だ。


だが、僕は彼女の身体の一点に釘付けになる。


長く、尖った耳。


その瞬間、僕は悟る。


異世界転生だ……と。

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