第28話 神社①
私は自分の床に腰を下ろし、ベッドにもたれかかっていた。もうサクラと友達でいたいって思えない。サクラとは友達になれない。私、なんにも分かっていなかった。サクラと友達でいたいって気持ちなんか、最初からなかったんだ。私はサクラと一緒にいたい、サクラの隣にいたいんだ。でもサクラに嫌われたくなくて…違う、自分がただ傷つきたくなくて、サクラとは友達のままがいいって思い込んでいたんだ。友達なら私の恋心を伝えないで済むから。でもサクラが友達として接してくるほど苦しい。なんで簡単に触ってくるの。なんで簡単に一番って言うの。なんで平気で私と二人きりになれるの!私はサクラに自分の気持ちを伝えることすらできないのに、友達だからって私がしてほしいことを簡単にしないでよ。友達なのにそんなことをされたら、私の気持ちって何?私はサクラの友達以上にはなれないって断言されてるみたいじゃん!私はこれからどうしたらいいの?これからも苦しみ続ければいいの?サクラとは友達のままで、私だけが苦しんで、苦しんで、苦しんで苦しんで苦しんで!でも私はサクラから離れることはできない。私はなんでサクラのことを好きになっちゃったんだろう。苦しいのに、今でも大好きなまま。サクラに告白すれば楽になるの?…それだけは駄目。サクラが私から離れていく。サクラを感じることができなくなる。それだけは絶対に嫌。でももう、サクラとは特別になりたいって思ってる。友達でいたくない。でも、サクラは私のことを友達としか思ってない。私は床に座りながらうずくまった。サクラのことを考えれば考えるほど嗚咽が止まらない。もう自分の考えがまとまらない。何も考えられない。考えたくない。苦しい…
「誰か…助けて…」
「アザミちゃん!?どうしたの!?」
突然ケイコちゃんの声が聞こえた。なんでケイコちゃんの声がするんだろう。私とうとうおかしくなったのかな。ケイコちゃんの声はどこからしている?もうわからない。何も考えたくない。
「アザミちゃん!」
しばらく聞こえなかったケイコちゃんの声がいきなりさっきよりもリアルに聞こえて私は顔を上げた。すると目の前にケイコちゃんがいた。なんでケイコちゃんが私の部屋に?いつの間にか部屋のドアが開いてる。本物?
「ケイコちゃん…なんで…?」
ケイコちゃんは何も言わずに私の前に座り込んで優しく抱きしめてくれた。私はただ、ケイコちゃんにしがみつきながら泣くことしかできなかった。
「アザミちゃん落ち着いた?」
ケイコちゃんが私の隣に移動して座って優しく話しかけてくれた。あれからどれくらい経ったのかは分からないけど、ちょっと落ち着いた。本当にケイコちゃんが私の部屋にいる。
「ケイコちゃん、なんでここにいるの?」
ケイコちゃんが自分のスマホの画面を見せて説明した。
「アザミちゃん私に電話をかけてたよ。でも全然返事がなかったから、去年みんなで送り合った年賀状を見てここまで来たの。それでアザミちゃんのお母さんに入れてもらえて」
そういえば去年、サクラの提案であえてハガキで年賀状を送り合おうって話になったことを思い出した。それに視線を下に向けると、確かに私のスマホは通話中になっていた。画面を確認すると通話時間が四十分以上になってる。いつ電話をかけたんだろう。私は通話を切った。そしてケイコちゃんに家にまで来てもらった事に申し訳なさを感じた。
「ごめん、迷惑かけちゃって」
ケイコちゃんは首を横に振った。
「迷惑じゃないよ。ただ、すごく心配した」
その顔は本当に私の事を心配してくれている顔だった。
「ごめん…」
私は謝ることしかできなかった。それでもケイコちゃんは私に優しくしてくれた。
「謝らなくていいんだよ。アザミちゃん、どうしたの?」
「えっ…と…」
全然言葉に出せない。何を話したらいいのかわからない。私が戸惑っているとケイコちゃんは優しい口調で言った。
「私はアザミちゃんのことを助けに来たよ」
私はケイコちゃんの言葉を聞いて自然と言葉が出ていた。
「私、サクラが好き」
なんでだろう。ケイコちゃんに助けに来たって言ってもらえて、自分の口が止まらなかった。もう止められない。私は再び涙を流していたけど、構わずに話を続けた。
「私はサクラのことが大好き。友達なんか嫌。サクラの特別になりたい。でも…何もできなくて…苦しくて…」
ケイコちゃんは言い淀んでいる私を再び抱きしめてくれた。
「アザミちゃんのその気持ち、私は痛いほどわかるよ。つらいよね、苦しいよね」
私は声を荒げた。
「苦しいの!ずっと苦しくて…でもどうしようもなくて…」
「私ね、フウちゃんと違って、女の子だけが恋愛対象だったの」
「え…?」
ケイコちゃんは優しい口調のまま私に話してくれた。
「私もね、一度だけ、中学生の時に、好きな子に告白をしたことがあるの。その返事が、私のことそんな目でみてたの、気持ち悪い、だった」
「ケイコちゃん…」
ケイコちゃんは悲しい顔をしていたけど、話を続けてくれた。
「それで私はおかしいのかなって思って、それからは誰かを好きになることが怖くなった」
「でもなんで…」
ケイコちゃんは優しい顔に戻った。
「それでも出会っちゃうの。自分にとっての運命の人に」
私はケイコちゃんが優しく話してくれているのに声を荒げてしまう。
「でも!私は怖い!サクラにはずっと私のそばにいてほしい!それでも自分の気持ちを伝えて今の関係が壊れることが怖いよ!」
「私もそうだったよ。フウちゃんに見放されるかもって思うと怖かった。でもね、好きな気持ちは自分では抑えられないの」
「じゃあ私はこの先ずっと苦しいままなの?」
私はこの先も苦しいままと思うと下を向いてしまった。そんな私を見てケイコちゃんは私の腰を擦りながら話を続ける。
「それは違うよ。アザミちゃんにもこの先、苦しいとか怖いとか、そういう考えが全部吹き飛んで、相手のことを好きってことしか考えられない瞬間が来るよ」
「そんなこと…本当に…?」
「その瞬間、私は自然と言葉に出てた。それでフウちゃんには受け入れてもらえて。私は運がいいと思う」
「でもサクラは…」
「アザミちゃんはサクラちゃんのどこを好きになったの?」
「それは…」
質問を受けて私はケイコちゃんの顔を見た。私はサクラのどこを好きになったんだっけ。美人なところ?優しいところ?…違う。私は泣きながらケイコちゃんに答えた。
「…私にだけに見せてくれた、眩しい笑顔…」
ケイコちゃんは頷いた。
「アザミちゃん、今はそれだけを考えてみて。サクラちゃんの笑顔が見たいってことだけ」
「笑顔だけ…」
そういえば最近、サクラの笑顔を求めていたっけ?私、サクラのこと、全然見ていなかったかも。サクラとの関係性のことばかり考えていた。そうだよ、私はサクラの笑顔が見たいんだ。
「ケイコちゃんありがとう」
ケイコちゃんが私に笑顔を見せてくれた。
「アザミちゃんが少しでも楽になってくれていたら、私は嬉しいな」
「うん…私は今すぐ何かをすることはできないけど…それでもまずは、サクラの笑顔が見たい」
さっきまであんなに苦しかったのに。今はただ、サクラの笑顔を求めている。今は友達とか、特別とか、嫌われるかもとか、そんなことは考えなくていい。サクラの笑顔のことだけを考えよう。
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