💋「アラビア、中華、インドの官能」、〔アラビアのロレンス〕〔南少佐とその一族〕〔インドの夢魔〕〔各国ハーレム物語〕の各エピソード

🌸モンテ✿クリスト🌸

新編 アラビアのロレンス

アラビアのロレンス1

 1917年、アラビアの砂漠は昼の灼熱と夜の冷気を交互に浴びせ、隊商のラクダが砂塵を巻き上げていた。第一次世界大戦の渦中、英国陸軍の少佐T.E.ロレンスは、アラブ反乱を支援する任務を帯び、アラビア半島を駆け巡っていた。


 彼の青い瞳と風変わりな白いアラブ服は、砂漠の戦士たちに奇妙な印象を与えていた。この夜、彼はアラブ族長ファイサル・イブン・フサインの屋敷に招かれていた。ファイサルは大アラブ王国を夢見る老練な指導者で、オスマン帝国からの独立を英国の力を借りて実現しようと画策していた。ロレンスは知らなかったが、この夜、彼は砂漠の策略に巻き込まれる運命にあった。


 屋敷の中庭は、椰子の木陰に囲まれ、絹の帳が風に揺れていた。晩餐の準備が整い、ロレンスはファイサルの隣に座らされた。テーブルにはアラブの豪華な料理が並び、まず目を引いたのは「マンサフ」だった。子羊の肉がヨーグルトソースに浸かり、松の実とアーモンドが散りばめられ、炙った平パン「シュラーク」の上に山盛りになっていた。


 隣には「クッバ」があり、スパイスで味付けされた挽肉を小麦粉の皮で包み、油でカリッと揚げた香ばしい一品だ。さらに、「ファッタ」――ひよこ豆とヨーグルト、タヒーニソースが層になり、焼いたパンと砕いたナッツが乗った濃厚な料理が皿を飾っていた。甘い締めくくりには「クナーファ」が用意され、チーズと細いパスタ生地がシロップに浸かり、ピスタチオが彩りを添えていた。葡萄酒が銀の杯に注がれ、香油の匂いが漂う中、ロレンスは「砂漠でこれほどの饗宴とは、アラビア人はロンドンの貴族に料理の講義でも開くつもりか」と皮肉っぽく呟いた。ファイサルが「我々の歓迎のしるしだよ、ロレンス殿」と笑顔で応じると、彼は「ふむ、歓迎にしては少々過剰だな」と眉を上げた。


 宴が進み、葡萄酒が次々と注がれた。ロレンスは気づかなかったが、ファイサルはその杯にアラビアのハシッシュをこっそり混ぜていた。さらに、媚薬として知られる秘薬が微量に溶かされ、彼の理性に忍び寄る準備が整えられていた。杯を重ねるごとに、ロレンスの青い瞳がぼんやりとし、「どうやらこの葡萄酒、少々頭にくるようだ」と自嘲気味に笑った。ファイサルは「砂漠の夜は不思議な力を秘めている」と意味深に答えつつ、彼の手元にさらに杯を押し付けた。やがて、ロレンスの良識は霧散し、「このマンサフ、羊が私に敬礼している気がする」と呟き、隣の戦士が「少佐、大丈夫か」と困惑した。彼は「大丈夫も何も、私は今、羊と外交交渉中だ」と肩をすくめた。


 酩酊したロレンスは、ファイサルの手下に支えられ、ハレムの奥へと連れ込まれた。彼自身、どこにいるのかも分からぬまま、絹の帳が揺れる部屋に放り込まれた。そこでは、ハレムの侍女たちがベリーダンスを披露していた。部屋は燭台の灯りに照らされ、ジャスミンとサンダルウッドの香りが漂い、絹の帳が薄暗い光を柔らかく反射していた。侍女たちは妖艶な動きでロレンスの視線を奪った。


 まず目を引いたのはサミラだった。彼女は肩まで届く黒髪をゆるやかに揺らし、金の腰帯がチリンチリンと鳴るたび、砂糖色の肌が汗で光った。彼女の腰は波のようにうねり、薄いヴェールが臀部の曲線を隠しつつも強調していた。


 次に現れたのはナディアで、紫のヴェールを纏い、豊満な胸が揺れるたびに銀の装飾が跳ねた。彼女は足を高く上げ、くるりと回転し、ヴェールが一瞬だけ彼女の太腿を露わにした。


 そして、アリヤが加わり、深い緑の瞳でロレンスを見つめながら、ゆっくりと腰を円を描くように動かした。彼女の指には金のリングが光り、手首をひねるたびに小さな鈴が鳴り響いた。三人の動きは同期し、時には互いの腰に手を置き、時にはヴェールを絡ませて挑発的なポーズを作った。砂漠の風が帳を揺らし、彼女たちの汗ばんだ肌に光沢を与え、部屋全体が生き物のように脈打っているかのようだった。


 ロレンスは目を細め、「これはまるで、砂漠が私を踊りで裁判にかけたようだ」と呟いた。サミラが腰を低く落とし、彼の前で揺れると、「おや、この動きはロンドンの舞踏会では習わなかったな」と皮肉っぽく笑ったが、心臓が早鐘を打つのを感じていた。


 ナディアが回転し、紫のヴェールが彼の膝をかすめると、「ふむ、任務よりこちらの戦術の方が厄介だ」と自嘲しつつ、媚薬の熱が体を這うのを感じた。アリヤが近づき、緑の瞳で彼を見据えながら腰を振ると、「いやはや、こんな目で見られたら、砂漠の全ラクダを差し出してしまいそうだ」と呟き、理性が揺らぐのを抑えきれなかった。彼の心はシニカルなユーモアで抵抗を試みたが、侍女たちの妖艶な動きに感情が奪われ、「どうやら私は、ハレムの法廷で有罪判決を受けたらしい」と独り言を呟いた。


 その中でもひときわ可憐な美少女が目に留まった。長い黒髪が波打ち、オリーブ色の肌が燭台の光に輝き、大きな瞳がロレンスを誘うように瞬いた。彼女は微笑みながら近づき、ヴェールを少しずらして肩を露わにした。


 媚薬に支配されたロレンスは「君は砂漠の幻か、それとも私の任務を潰す刺客か」とシニカルに呟きつつ、彼女の手を取った。彼女が「少佐、私と一緒にまいりましょう」と囁くと、彼は「ふむ、任務を放棄して君と砂漠を歩くのも悪くないな」と笑い、別室へと連れ込まれた。実は、この美少女こそ、ファイサルの第四婦人、ハディージャだった。ファイサルの策略は、ここから本番を迎える。


 別室は絹の帳で仕切られ、床には厚い絨毯が敷かれ、ジャスミンの香りが濃厚に漂っていた。ロレンスはハディージャに導かれ、寝台に腰を下ろした。彼女はヴェールを脱ぎ、薄い衣を通して見える柔らかな曲線を露わにした。


 ロレンスは「これは夢か、それとも砂漠の策略か」と呟きつつ、彼女の肩に手を伸ばした。ハディージャは「少佐、私をしっかり見て」と甘く囁き、彼の首筋に唇を寄せた。その瞬間、ロレンスの体は熱く燃え上がり、「どうやら、ハシッシュが私の紳士協定を破棄したようだ」と自嘲しつつ、彼女の腰に手を回した。


◯T.T.ロレンス(トーマス・エドワード・ロレンス):

英国陸軍少佐。第一次世界大戦中、アラブ反乱を支援した実在の人物。知性とシニカルなユーモアを持ち、本作では砂漠の誘惑に翻弄されつつも皮肉で応じる。


◯ハディージャ:

ファイサルの第四婦人。可憐な美少女で、ハレムの侍女としてロレンスを誘惑し、ファイサルの策略に一役買う。オリーブ色の肌と大きな瞳が特徴。


◯エリザベス・マーガレット・ハミルトン:

ロレンスの許婚。1890年生まれ、27歳。ロンドンのハミルトン家出身の貴族令嬢で、オックスフォードで歴史学を学び、外務省で働く才女。金髪に灰色の瞳を持ち、気品と知性を備える。ロレンスと1915年に婚約したが、任務で疎遠に。


◯ファイサル・イブン・フサイン:

アラブ族長。大アラブ王国を夢見る指導者で、オスマン帝国からの独立を目指す実在の人物。老練で狡猾、策略家としてロレンスを利用する。


◯サミラ:

ファイサルのハレムの侍女。黒髪と金の腰帯が特徴で、ベリーダンスでロレンスを魅了する。 ベドウィン出身の率直さと知恵。砂漠の荒々しさと女としての自信を持つ。


◯ナディア:

ファイサルのハレムの侍女。紫のヴェールと豊満な体型で、妖艶な動きを披露する。ダマスクス出身の狡猾さと哀愁。商人の血と過去の傷を匂わせる。


◯アリヤ:

ファイサルのハレムの侍女。緑の瞳と金のリングで、ロレンスの心を揺さぶる。南アラビアの知性と冷たさ。交易の知識と観察眼でロレンスを試す。

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