それが彼女の結論(こたえ)なら

相内麗

第1話 出会いは特別プロジェクト

 中野由美なかの ゆみとの出会いは三鷹製菓創業三十五周年記念という臨時の特別プロジェクトに参加したからだった。中野さんは営業部、私はマーケティング部の代表としてプロジェクトに呼ばれた。

 部署がまったく違っていても中野さんのことは以前から知っている。何だったら知っているだけじゃなくて気にする相手でもある。

 整った顔立ちにブロンドの長く美しい髪、成績も常に最上位を争う位置にいる営業部のエースである彼女は社内の男女問わずに周囲から常に気に掛けられている存在である。


 私はマーケティング部課長の立川薫たちかわ かおる。年は三十代半ばとだけ言っておく。女は三十才を過ぎると誰しもが年齢を忘れる病気にかかるの。不治の病ね。

 独身だけど婚約者はいる。まぁ、いるっていうだけなんだけど。と言うのも婚約した後で彼には私以外にも女がいることが判明したから。

 彼的には悪いことをしている意識は微塵もない。私は婚約者であって家庭を持つ相手。他の女は愛人であって性欲を処理する相手というのが彼の言い分みたい。役割が違うので浮気ではないと弁明にならない弁明をしている。

 その言い分が正当化されるのであれば世の浮気の大半は浮気ではなくなる。もっともそれは世間の評価であって私の評価ではない。私的には夜な夜な身体を求められる面倒がなくてそれはそれで便利かもと思ってしまった。


 私自身に問題が起こりそうだと最初に感じたのは特別プロジェクトに参集した時だった。それは中野さんを間近で見てしまったから。彼女は私の好みにどストライクだった。

 そう、私は同性愛者。男が嫌というわけじゃないから両性愛者なのかもしれない。ただ、今までに男性にトキメいたことは一度も無い。

 初めてトキメいたのは高校生の時。先輩に素敵な女の子がいた。もちろん告白なんか出来るはずもなく自分が同性に対して特別な気持ちを持つ人間であることに只々驚いた。

 この時から私は恋に対しても性に対しても慎重に、そして臆病になった。


 特別プロジェクトのキックオフは社長のポケットマネーを使って会社近くの居酒屋で行われた。このキックオフの会場で私は中野さんから声をかけられた。

「立川課長。営業部の中野です。初めてお目に掛かりますのでご挨拶させてください」

「こちらこそはじめまして。マーケティング部の立川です。中野さんの噂はマーケティング部にも届いているわよ」

「えっ、どんな噂ですか?」

 中野さんは急に慌てだした。

「美人、頭の回転が早くて切れ者。中野さんがいる限り営業部は向かうところ敵なしだろうって」

「そんなことないです。もう、そんな噂ホントにあるんですか?」

「私が勝手に思い込んでいるだけかもね」

「やだぁ、もう」

 こうして私と中野さんは遠くから見ているだけの関係から近くでお喋りをする関係になった。

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