ラスボス戦でうんこ漏らしそうな勇者(2/3)

「た、頼むッ………気づいてるんだろッ!? 来てくれーーーーーッ!!!」


 俺は、ある人物の名を必死で叫んだ。


 その人物とは―――



 俺たち勇者パーティが、冒険を開始することとなった原因であって―――最初の小さな町で、ラスボスにさらわれたこの国の―――



「姫ーーーッ!」



 俺は姫の名を必死で叫んだ。何故か?


 それはもちろん、俺の最高級革製レギンスが茶色になる前に《エンディング画面》を呼び出すためである。


 通常、ラスボス戦というものでは、ラスボスを倒せばエンディングが流れ、制作スタッフの名前がずらりと上から下へスクロールしていく。


 多くの勇者は、ラスボスを倒せばその余韻に浸り、仲間たちと……あるいは救出した姫やら愛する人やらと幸せを分かち合うのであろう。


 が、俺は違う。そんな感傷に浸る余裕などない。だってもうお尻が限界だから。


 俺は、この土壇場で思いついたのだ。ラスボスを倒さずとも、エンディング画面へ辿り着き、その混乱に乗じてこの場からドロンする方法を。


 それこそが《ラスボス倒す前に姫なんとか呼び出してゲームクリア判定にしてエンディング画面呼び出そう大作戦》である。うん、そのままだね。





***





以前スケルトンの谷というダンジョンを攻略した時ーーーボスとその取り巻きとの戦いをなんとか制した時ーーーに、興味深いできごとがあった。


 俺と僧侶でスケルトンのボス。残り三人で取り巻きのスケルトンA、Bを相手取っていた時のこと。


 一時間を超える戦闘の末。ついに、ボスの体力ゲージがゼロになった……その瞬間のことだった。不思議なことが起きたのだ。


ボス撃破と同時に、取り巻き二体の動きがぴたりと止まりーーーそのままがらがらと崩れ落ちた。


 スケルトンは、一度倒しても時間経過で何度でも復活してくる厄介なモンスターだ。


 なので、俺と僧侶除く三人は、取り巻きたちの体力ゲージがぎりぎり残っている状態を維持し、スタン属性持ちの攻撃で動きを止めることに徹していた。


 うっかり体力をゼロにし、復活させてしまえば、せっかく減らしたスケルトンの体力は全快してしまうからだ。体力が減るとモンスターの動きは鈍るので、この戦法が結果して、一番有効であった。



「勇者ッ……倒しましたよ!」



 スケルトンのボスを倒すと《撃破》という文字が空中に浮かび上がる。取り巻きたちが崩れ落ちたのは、そのわずか数秒後だった。

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