WRSBの、泥の中からこんにちは🥷

「(通信音)……聞こえるか、マキ、幸来。ここは有明海の深淵——通称『ガタ』の最前線だ🥷」

泥の中から突き出たタクティカル・アイピースが、鈍く緑色に発光する。**WRSB(ワラスボ)**は今、首まで泥に浸かり、完全に周囲の景色と同化していた。


「……現在、私の目の前には、この海でもっとも凶暴かつ高貴なエイリアン……『ワラスボ』の成体が潜伏している。見てみろ、あの眼球が退化した顔。むき出しの牙。あれこそが、光を捨て、泥の中で真実を掴んだ者の末路だ🥷」


「おいおい、そんなハードボイルドな声で魚の生態解説を始めるんじゃねーぜ🌸」

山本 マキは、安全な自室のゲーミングチェアにふんぞり返り、『ワラスボ・ポーチ』のモニターを眺めてツッコミを入れた。


「あたいのセンサーには、あんたの体温が泥と一体化しすぎて、生存信号が消えかかってるって警告が出てるんだぜ🌸 某・隠密アクションゲームのパクリにしては、あまりにも地味すぎて視聴率(エンゲージメント)が稼げねーんだぜ🌸」


「わぁぁ🌼 兵隊さん、ワラスボさんとお友達だぉ🌼 幸来も、泥んこの中に入ってお話ししたいぉ🌼」

**鹿島 幸来(ゆき)**が、『ムツゴロウ・ショルダー』からおもむろに割り箸を取り出した。


「(通信音)……よせ、幸来。ワラスボは警戒心が強い。奴らは泥の振動で、相手が自分を『美味しい煮付け』にしようとしているか、それとも『崇高な戦友』として見ているかを瞬時に判断する🥷……むっ、奴が動いた。時速コンマ数秒の神速……まさに、アニマが追い求めるガタルギアの理想的な機動性能だ🥷」


「ただ魚が跳ねただけだろーが🌸」

マキが呆れ果ててポテトチップスを口に放り込んだその時、通信機から凄まじい「ギュルギュル」という音が響いた。


「(通信音)……う、うあああ! 私の胃が、ワラスボの牙で内側からノックされているようです……っ!」

仲田(なかた)事務局長の悲鳴だ。彼は今、アニマのマダム・フォルツァから命じられた「ワラスボの生態を模した新型耐圧スーツ」の試着テスト中で、マシンの激しい振動に悶絶していた。


「(通信音)……仲田、報告を。ワラスボの精神状態はどうだ🥷」


「精神状態も何も、私は今、時速50キロで泥のプールを回転させられているんです……っ! 助けてください、WRSBさん! 胃薬……私の、新発売のガタニウム配合胃薬を……っ!」


「(通信音)……耐えろ、仲田。君が泥の一部になった時、初めてガタルギアの弱点が見えるはずだ🥷 私は……さらに深く潜る。次のターゲットは、干潟のアイドル・ムツゴロウだ🥷」


「誰もあんたにそこまでの潜入(ダイブ)は求めてねーんだぜ🌸」

マキのメタ発言が響く中、WRSBは泡を吹きながら泥の底へと消えていった。鹿島の平和を左右する機密情報は、今日も魚の生態データと共に泥に埋もれていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る