胎動

蒲公英薫

 なお先へ進み

 視線を前へやるに先立ち

 僕は孤独のなかで両腕を貴方の方へあげる――

 常に繰り返し 貴方の声が

 僕の心にとどくようにと

 心の深い深い場所に

 僕はおごそかに祭壇を祀った 貴方のために

 貴方へと 僕は逃れる

 その祭壇に強く刻まれ燃えている言葉は――

「未だ知られざる神へ捧ぐ」

 たとえ僕がいまここにこうして

 涜神者の群にいるとはいえ

 僕は その神のものだ

 僕は 貴方のものだ――闘いつつ僕をとらえ

 どのように逃れようとしても

 仕えることを僕に強いる貴方の罠を僕は感じる

 貴方が知りたい――未だ知られざるものよ

 僕の魂を深くつかんで離さないものよ

 見極め難く なお血脈を持つものよ

 貴方が知りたい いや貴方に仕えたいのだ


   『未だ知られざる神へ』  フリードリッヒ・ニーチェ

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